あかんたれブルース

継続はチカラかな

片翼の天使の嘆きと遁走

 足りない女。
 この設定が世の男性陣にはウケた時代があったのでしょう。
 若い頃、生島次郎という作家の文庫の装丁を担当していました。
 作品的には相当に時代がかっていて読むのに苦労した記憶だけです。
 装丁するときは必ず原作を読まなければなりません。しかもゲラで。超苦痛でした。

 そんなとき、電車の中吊りに同氏の『片翼だけの天使』なるものを発見。
 当時、大ベストセラーとなった作品です。
 映画化もされたので御存知の方も多いのではないでしょうか。
 ストーリーを掻い摘んで話すと、

 ソープ狂いの生島先生がある店で天使を発見する。
 彼女は韓国人。片言の日本語。純朴な彼女に惚れる百戦錬磨のハードボイルド作家。
 そして、彼女と結婚する。

 ありゃりゃ、えらく簡単な説明ですこと。
 昔、ビジネスジャンプの読者投稿ページのタイトルに「バカはサイレンで泣く
 というようなコーナータイトルがありましたが(いまもあるかな?)
 若き馬太郎は中吊りの見出しだけで泣きましたから相当なバカでした。
 いまじゃ、決してそんなことない。はず

 しばらくして、別件で生島さんの装丁の仕事でダミーを提出したところ
 ものの見事に却下! デザイナーも変更ということに、、、。
 なぜ? 担当者曰く、(例の)奥様が表紙に描かれた女性に嫉妬してとのこと。
 確かに私は表紙にコラージュで外人の女をはめ込みましたが、
 おいおい、そりゃ絵空事のことというか、なんでそれに嫉妬するのよ。
 バカじゃないかこの女! それをニヤニヤしながら容認するこの狒狒爺は何なんだ!
 白けちゃって、「片翼の天使」は小説も映画も見ていません。グッバーイ

 それから20年。
 先日、生島さんの話題になって、氏が既に死去されていたことを知ります。
 で、あの奥さんはどうなりました?と聞くと
 「ああ、あの人は借金作って男と逃げちゃったんじゃないか」

 まあ。ざまあみろとは思いませんでしたが、感慨深い話でした。
 そして、以前から考えていた、彼女に対する、感じた、「片翼」とはなんだったんだろう。
 を、帰り道の増上寺前で思いおこします。

 片言の日本語。朝鮮人ソープ嬢。純粋、純朴、、、ちょっと足りない。
 失ったいた片方の翼には何が託されていたのか、、、。
 そもそも天使だったかどうかも疑問ですが、やはり天使だったんでしょうね。
 やっぱり、愛は陽炎
 かな