読まなければいけない本は山積みなのに、
洋泉社『おそめ』を夢中になって読んでしまった。
「空飛ぶマダム」として、昭和30年代から40年代の京都と銀座に君臨した伝説のマダム。
近現代史、暴力団史をテリトリーとする馬太郎にとって絶好のストライクゾーンでした。
おそめ自体は京女を代表する女性で、
所謂「銀座のホステス」とは一線を画す存在。
それ故に、伝説の女性でもあります。
よく、男の視点、女の視点といわれますが、この本は「女の視点」で捉えられている。
著者、石井妙子は私より一回り若い37歳。(写真下)
囲碁関係のフリーランサー。無名といってもいいノンフィクション作家です。
この本は、彼女のフィルターを通して、おそめの周囲の女性達の取材をもとに
描かれた「女性の視点」の伝記といっても過言ではないでしょう。
なぜ、私が、その視点の男女を気にするかというと、
おそめの夫・俊藤浩滋の描かれ方にあります。
この男、悪い男。という満場一致の見解でした。
私の妻も「ひどい男」ともらして譲りません。
おそめと俊藤は長く内縁関係の夫婦でした。
俊藤は独身と偽って、おそめと結ばれますが、
実際は三人の子供を抱える戸籍上の妻がいます。
この真ん中の娘が東映の「非牡丹お龍」で一世を風靡した藤純子です。
そして、俊藤浩滋とは東映仁侠路線を大ヒットさせた名プロデューサーでした。
あの『仁義なき戦い』第一作のプロデューサーで、周囲の反対を押し切り、
干されていた深作欽二を抜擢した人です。
しかし、それ以前の彼は、おそめのヒモであり、いかがわしい穀潰し。
女の敵、限りなく黒に近いグレーな男でした。
しばらく、『おそめ』と俊藤浩滋について綴りたいと思います。
つづく