あかんたれブルース

継続はチカラかな

寺島しのぶの爺さんの夢と希望

「おそめ」から(5)

 俊藤の部屋には、彼が死ぬ間際まで対の写真立てが飾られていました。

 ひとつには、おそめの写真。

 俊藤が一番気に入っている美しい盛りのおそめの写真。

 もう一方には、薄い半紙を二つ折りにして筆書きの俊藤自身の言葉が残されています。


 「夢は見続けることによって、必ず希望は実現する」


 これが、俊藤自身の言葉としての、彼の応援歌だったのでしょう。

 おそめのヒモと蔑まされ、運転手と扱われ客からチップを投げつけられる俊藤。
 浮き名をながして暗い街並みを歩くときにも俊藤はこの言葉を噛みしめていた。のかな

 俊藤は夢を持って、諦めずに、その希望を実現します。

 
 俊藤の成功は「おそめ」とおそめがなければ有り得ないといいます。
 それを否定はしません。
 銀座「おそめ」の客だった東映社長・大川博との出会いが大きい。
 鶴田浩二や次期社長の岡田茂など、すべての邂逅は「おそめ」が舞台です。

 けれども、それがおそめを利用したことになるのか?
 二人は夫婦です。共同体。一味。チーム。同志。
 夫の夢が実現することをおそめは望まなかったのか。そんなことはない。

 俊藤への周囲の憎悪は「おそめ」の凋落を俊藤が招いたと指摘します。

 京都の「おそめ会館」
 この破綻が「おそめ」の終焉を加速させました。
 それを強引に押し進めたのが俊藤浩滋だったと。

 「おそめ」の凋落と反比例するように俊藤浩滋の運は開けていきます。
 東映のプロデューサーとしての成功。

 その対比がよけいに俊藤という男を「悪い」と感じてしまう。


 そうかなあ。

 仮に、その後、俊藤がおそめを捨てて
 東映ニューフェイスとか別の女性と結婚した。というなら私もそう思うけど。
 結局、この二人は最期まで夫婦でした。

 そりゃ、夫婦だから色々ありますよ。

 だから、夫婦でしょ。