あかんたれブルース

継続はチカラかな

定吉二人きり

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愛の十字路 第二章(番外-5)阿部定の場合


 阿部定といえば大島渚の『愛のコリーダ』を思い浮かべます。違うのかな?
 ディスコミュージック? 何それ?知らない!

 大島渚監督で映画化されました。ハードコアです。私はこの手を映画を評価しません。
 日本のヌーベルバーグの旗手と謳われた彼の作品では『少年』ぐらいしか好きになれない。

 古き東京の都電の名残りとして走る都営荒川線。その沿線に尾久という町があります。
 さびれた町です。

 昭和11年5月、この尾久にある待合(旅館)に
 石田吉蔵(42歳)と阿部定(31歳)はシケコミ、七日間情交を貪りました。
 凶行のあったのが18日に吉蔵は変死体で発見される。
 絞殺された吉蔵は下腹部をえぐり取られ、夜具の裏地にはその鮮血で

 定吉二人きり

 と書かれていました。そして、吉蔵の左太股に刃物で「定」と刻まれていた。
 姿を消した連れの女が重要参考人いや容疑者として指名手配される。

 その女、阿部定

 これが昭和を震撼させた猟奇事件です。


 定は明治三十八年神田の畳屋の娘として生まれました。
 わがままいっぱいに育って不良少女の仲間入り。現代とかわりません。 

 彼女の生い立ちは以前ここで紹介した横浜「富貴楼」のお倉に似ています。
 「明治の黒幕赤組横綱」 URL: http://blogs.yahoo.co.jp/djkxq447/28136644.html
 
 定の性的なアナーキーは15歳の頃に知り合いの学生に犯されたことによるそうです。

 「隠して嫁にいくのも話して嫁にいくのも、嫌だ」

 そして暴走したみたいですね。

 親爺が怒って「そんなに好きなら娼妓に売ってしまうぞ」
 我が子を売るなんて凄い話ですが、とことん堕ちて世間を知れと。
 これも親心だったようです。男子が組関係に預けられるのと同じ?違うなあ。。。

 これでホントに芸者に売られました。転落はしても定は柳に風。
 これより暴走はギア全開です。
 とことんやりました。

 そして、時は流れて定も三十路にさしかかる。
 いつまでも体を売ってはやっていけない。まじめにやれよとすすめる男もいて、
 中野の割烹店に女中奉公に出た。ここの主人が石田吉蔵だ!

 ドキッ! ドックドックドック こんなイイ男はじめて。。。

 男経験の凄腕・定もクラクラクララ
 「あれほどの色男にあったことはありません」と言わしめた吉蔵さん。
 彼は女遊びを知り尽くし清元もかたる粋人で無邪気と三拍子そろった
 主と朝寝がしてみたい。な男だったのです。そして優しい。

 二人は初対面で視線はバッチリ 一目会ったその時から恋の花咲く大遭遇

 4月19日に交わり、4日後に家人ばれて出奔。事件は翌月の18日。

 定は2日後に品川で逮捕されます。吉蔵の一部と一緒に。。。

 その時、定は
 「吉蔵を殺して安心です」と、晴れやかに微笑んだそうです。

 取調は定の吉蔵への愛で綴られていきました。

   石田は寝間がとても巧みな男で情事の時は女の気持ちをよく知っていて、
   自分は長く辛抱して私が充分気持ちをよくする様ににしてくれと、
   口説き百万陀羅で女の気持ちをよくすることに努力し一度情交しても
   また直ぐ大きくなると云う勢力振りでした

   のどをひもでしめながらすれば気持ちいい

   お前が良ければ少し苦るしくてもがまんするよ
   だけど俺からはできない
   なんだかお前が可哀想だから嫌だ

 なんたる色男!言語同断。これでよろめかないわけがない。
 男性諸兄よ吉蔵を目指せ。

   他のだれともいい事をしないようにいっそ殺してしまおうかしら

   お前のためなら死んでやるよ

   定吉二人きり


 不毛な歳月を迷い歩いてきた定に現れた愛しいひと
 この七日間で定はこれまですのすべてを取り戻そうとします。
 そして絶頂と嫉妬と真理を求めて、決着をつけてしまうのです。


 大島渚の映画は情交シーンばかりがクローズアップされてこの辺りが分からない。
 いや、まだ若かった私が読みとれなかったのでしょうか。
 かといって、もう一度観る気にもなれませんけどね。
 
 こちらが嫉妬するほどに、阿部定も石田吉蔵も幸せだったと感じてしまう。
 これを究極の愛。とは云いませんが、
 愛の形もひとそれぞれ、そして、相手にもよります。



 
写真は逮捕直後の定ですが、警察関係者が和気藹々ですな。
それはいいのですが、せっかくの「愛の考察」が台無しのようで、、、。
ちっと悲しいような(涙)。これでいいのだ(笑)。