愛の十字路 第二章(24)
「 (特攻をすればフィリピンが防衛できるか)これは、
九分九厘成功の見込みは無い。これが成功すると思う程大西は馬鹿ではない。
では何故見込みのないこの様な強行をするのか、ここに信じて宜しい事が二つある。
ひとつは万世一系仁慈を以って天皇陛下は、このことを聞かれたならば、
必ず戦争を止めろ、と仰せられるであろう事。
二つはその結果が仮に、いかなる形の講和になろう共、日本民族が将に亡びんとする時に当たって、
身を以ってこれを防いだ若者達がいた、と言う事実と、
これをお聞きになって陛下御自らの御仁心に依て戦を止めさせられたと言う歴史の残る限り、
五百年後、千年後の世に、必ずや日本民族は再興するであろう、ということである。
陛下が御自ら御意志に依て戦争をやめろ仰せられたならば、
いかなる陸軍でも、青年将校でも、随わざるを得まい。
日本民族を救う途が外にあるであろうか。
戦況は明日にでも講和をしたい所まで来ているのである 」
これが「特攻の父」と言われ、
その命令者であった大西滝治郎中将(当時、第一航空艦隊司令長官)の「特攻」に期待する
本当の真意だったようです。
大西長官は特攻に対して「統率の外道」とも漏らしていたともいいます。
しかし、天皇は「やめよ」とは言いませんでした。
遺憾ではあるが、しかしながら、「よくやった。」と言ったそうそうです。
特攻は戦果よりも「死ぬ」ことを求められていきます。
大西長官のヨミは甘かったということでしょうか。