犬の生まれかわり
その頃、わたしの家は母方の祖父の敷地内に小さな家を建てて住んでいました。
コロが成長すると、近所の雄犬が夜中に集まって祖父の敷地内の畑を荒らす。
うちの田舎は鰹節の産地で番犬ではなく、猫の駆逐のために犬を飼っています。
どこの家も繋がないで野放し状態で飼っていました。
明治生まれの祖父はわたしには甘かったですが、
とても厳しく、母親も恐れていたようです。
親子の関係もいまとは少しニュアンスが違ってもいたようです。
そんな頃、祖母と母親と一緒に隣町の神社にお参りに行きました。
行きは線路づたいに歩いていきました。いまは廃線になった南薩線です。
帰りに雨が降ってきて、電車で帰ることになりました。
が、犬は乗せられなという駅員さん。そうコロも一緒だったんですね。
母親にはある予感があったんでしょう。
コロを置き去りにするといいます。わたしはよくわからなかた。
車窓からコロを見ていた。コロもこちらを見ています。
電車が動き出した。走り出した。コロも走りだしました。
でもそのうちにだんだん距離が離れてしまて、最初のカーブでコロの姿を見失った。
帰宅して、雨は本降りになってきました。
わたしはコロがきっと帰って来ると信じていました。賢い犬ですからね。
そして、コロは帰って来たのです。
母親は絶句していた。
なんか泣いて感動して魚肉ソーセージをあげていたのを憶えています。
「あよ〜お、コロ」という母親の言葉も憶えている。広東語みたいですね。
距離にして新宿から渋谷ぐらいですかね。
はじめての道でもコロにとってはなんてことないですよ。賢い犬ですからね。
しばらくして、コロは保健所に連れていかれた。そして帰って来なかった。
連れていたのは休暇で帰ってきていた父親でした。
大人の事情があるのだと思いました。
幼稚園に入る前の話だったので、死というものがよく理解できなかったのか。
ただ、母親がとても悲しんでいたので、たぶんきっとそのせいで納得したのかな。
わたしと母親は布団のなかでコロの想い出を語り合いました。
最初にもらわれてきた夜のコロの泣き声を想い出します。
母親が泣いているのがわかりました。
「あよ〜お、コロ。今度生まれかわってくるなら人間になって生まれてこいよ」
母親の言葉を記憶しています。
数年後、妹が生まれました。コロと名付けました。
そんなのとはない(汗)。
幸子だよ幸子。
正確には2年後ですね。
犬の話(2)コロの想い出(後)