天使を誘惑
ここは東西冷戦時代のベルリン。
壁で分断された街を眼下に天使がみつめています。
彼の名はダミエル。
彼の仕事はあらゆる人々に寄り添ってそのよろこびや悲しみを見守ること。
長い歴史のなかでその見届けという作業に従事してきた守護天使です。
そんなダミエルがサーカスの娘に恋をしてしまった。
そのことを親友で同僚の天使カシエルに告白します。
「なに?人間になりたい!」
正気かダミエル。人間に恋をしたら死ぬんだぞ。
カシエルは必死で彼を引き止めます。けれどもダミエルの決心は揺らがない。
そして、ダミエルはカシエルの腕のなかで死ぬ。
そして、ダミエルは人間になったのです。
永遠の命を捨てて、人間になることは死を選択すること。
ダミエルに人間になることを勧めたのはベルリンロケに来ていた
俳優のピーター・フォークでした。
なんと彼も昔は天使だったと言う!
「そういう連中は結構いるんだ」
荒涼の『パリ、テキサス』からヴェンダースはベルリンで愛を見つめる。
これが1987年の映画『ベルリン・天使の詩』のあらすじ。
公開当時はこれも話題作で観た。観るには観たが・・・
まだ若かったわたしは愛に無頓着だったか天使の調べに眠気に襲われ(汗)。
そして発酵して20年。すっかりピーター・フォークになっちゃった(涙)。
ふとね、わたしたちは天使になろうとしてるんじゃないかと
考えてしまった。
傍観者であろうとしていない?
すべてにおいて
それは間違っている。俺達は天使じゃない!
そんなタイトルの映画がありました。主演はボギーね(笑)。
ラブという言葉がまだ日本人に普及していなかった明治の頃。
I love you . この言葉をなんと訳すか?
夏目漱石は門下生に問い、自らは「月が綺麗ですね」と答えたそうです。
I love you . あなたはなんて訳す?
二葉亭四迷は「死んでもいい」と訳した。
天使も惑わす、恋の魅力。
愛を知るもの。それは絶対の幸福。
限りある人間の命。有限の人生。だからこそ、なおのこと。
なんか最近、自分は昔、天使だったような気がしてきだぞ。
「そういう連中は結構いるんだ」
愛を訪ねて三千里(4)