あかんたれブルース

継続はチカラかな

ゲスのかんぐり

昨日の黒田清隆の酒乱から身から出た錆とはいえ
夫人殺害疑惑をアップしてつくづく思うこと。

こういった歴史考察はよろしくない。
これが事実信じ込まれている理由には
夏堀正元『明治の北海道』(岩波書店)や
色川大吉『日本の歴史21』(中央公論社)の影響が大きいとされています。
小説の類じゃないってところが、恐いね(汗)。

戦後のジャーナリズムは正義を弱者に置き(?・・・建て前はね)
施政者、権力者、成功者の裏にある陰謀を暴くことに
大義とインテリジェンスをビリビリ漏電しているフシがある。
ま、いいんですが、時々勇み足や暴走することが多々あるようです。
黒田疑惑は結局わからない。
推理はいいとしても、小説やマンガじゃないんだから
そのあたりは作者の考察力推理力がものをいう。影響力ありますからね。
しくじれば、ゲスのかんぐりになるし、穿った見方が一般常識化してしまう。
風説の流布は投資の世界だと罰せられるんですよ。

ここに、言論の自由の弊害も、またある。

信長は生きていたとか家康は影武者だったぐらいなら
大したことはないですけどね。

なんか、藩閥政治超然主義が悪で
自由民権運動が正義、なんて簡単な図式で捉えられている。
たんなる利権争いじゃないか。といっても過言ではないのです。
やくざも絡んで大騒動大混乱というのが現実です。
「自由」とか「民権」という言葉は要注意。

小説の世界だと、
わたしの好きな児玉源太郎を描いた『天辺の椅子』。
まあ、これが児玉小説では一番の作品なのだと思います。が、
作者の古川馨氏は
児玉が桂太郎に対して嫉妬とライバル心を燃やしているシーンを若干
臭わせています。どうも違う。
そこにリアリティーを持たせようとしたのでしょうが、
はやい話が作家の想像力の賜で、こういった描写は
結果としてシラケさせてしまう。ゲスのかんぐりだって、思われても仕方ない。

後半に杉山茂丸日露戦争凱旋釜のエピソードがありますが、
送り主を「禅宗の坊主」としている。
古川氏は杉山の存在をしらなかったの?わざと?
もし、杉山の存在を知らなければ、
児玉と杉山と桂の三人だけの秘密結社のことも知らなかったことになる。
そうなると、児玉が桂に政治的なライバル心を燃やしたとか
桂の後の政権発足に野心を燃やしていたと推理してもしかたないけれど、
児玉はそんな了見じゃない。
古川氏は児玉源太郎、明治人を、捉えきれていない。

で、さらに頭を抱えるのが
児玉の死に暗殺疑惑をもってきて、
それを後藤新平と臭わせていること。

古川氏が杉山のことを知らないとすれば、
児玉の命を受けて大阪で後藤を満鉄総裁に説得させていたのが
杉山だったことも知らないことになる。
児玉が死の直前に大笑いしたのは、大阪からの杉山の電文を読んだから。
そこには
「後藤、実はやるき満々」とあった。わけだ。

決して、後藤が児玉を邪魔にしていたわけではないし、
児玉が死んで得をする人物でもない。
児玉が生きていれば、
後藤はもっとやりやすかっただろし、最終的には総理大臣にだって
なれたんじゃないかなあ。。。まあそれはいいとして、

もう一丁。
明石元二郎を主人公にした『錆びたサーベル』(杉森久英集英社
幼友達で杉山が三箇所登場するけどさ、
なんかとんでもないインチキ親爺に描いている!
だいたい、杉山は玄洋社の社員じゃないぞ!
もっと、しっかり調べて書けよ!

次回は小説ではい堀雅昭の『杉山茂丸伝』を斬る!