あかんたれブルース

継続はチカラかな

陰謀という名の電車に乗って

歴史考察をするときのポイントはその人物の進退
その言動、環境、交友関係などなどから多角的に観るのがコツであり
その推測にはセンスというものが必要です。
そのセンスを妨げるものは固定観念だとも思います。

はじめに答えありきで、そのために御都合で力業をやらかすと
民権運動家の中江兆民は良い人で
国権民族主義者の頭山満は得体の知れない悪の首魁になって
二人が親友だったことを理解できなくなる。
そうなると杉山茂丸はホラ丸で伊藤博文児玉源太郎暗殺の黒幕とされる。
じゃあ、犬養毅杉浦重剛はどうなるのか?

大東亜戦争を一口に「軍部の暴走」というけれど
軍部といっても色々あってそう単純なものではありません。
「参謀部」としてもいいのかもしれないけれど、それだけじゃない。
官僚やマスコミや国民も大きく加害者です。
国民を被害者とすると、誰かを加害者にしなければいけない。
ここにも不自由があるのでしょう。
歴史を、歴史から、学ぶということはそんな生け贄探しじゃない。

たとえば、日本人の朝鮮、中国人の差別意識
以前も何度か記事にしましたが
日露戦争までの日本人はそういった差別意識はない。

日清戦争の後に、日本は清国や朝鮮から大量の留学生を受け容れています。
講道館嘉納治五郎もその教育者のひとりであり、
魯迅周恩来などが教え子として日本で学んだ。

ウィキペディアにも記載されている
西郷従道のエピソードなかに
日清戦争後、息子の従徳が従道の前でチャンコロと発言したところ、
>「外国人を侮辱するな」と大激怒したという。

というものがあります。
これを眉唾としてはセンスがありません。
西郷従道の性格人柄を参照・考慮)

ポイントは欧米列強の植民地政策にどう対抗するかがテーマ。
そこで「アジア連邦(もしくは世界連邦)」という発想が生まれた。
頭山満がアジアの独立運動を支援したのはそこに理由があります。
もともとは横井小楠あたりからあったのだと思いますが、
石原莞爾の東西最終戦争もそこから生まれている。

そういう意味でも日清戦争が、100歩譲って日露戦争
「朝鮮を植民地化するためのもの」というのは違う。
朝鮮は併合ではなく、最初は合併だった。それが・・・

山口県は歴代総理を輩出した地ですが、
昨今、巷の陰謀説には田布施という朝鮮部落出身者がそれで
日本は朝鮮民族に支配されているのだという。
岸信介佐藤栄作安倍晋太郎がそれだといいます。
長州閥云々から朝鮮系日本人の陰謀に飛躍したわけです。

でも、どんな陰謀?

植民地時代に日本の金でインフラ整備をしたことをあげていた。
じゃあ、台湾はどうなるんだ!

偶然にも同じ田布施という地名が鹿児島にもあります。
薩摩半島の川辺郡の加世田市(現在は南さつま市)で金峰町あたり。
小泉純一郎元首相の父小泉純也氏はそこの出身であり
この朝鮮系日本人の陰謀に加担しているかのように囁いている。

でもさ、わたしはこの加世田市に隣接する枕崎市の人間だが
そんな話や噂はとんと聞いた憶えがない。
(加世田と枕崎は仲が悪いのに。狡いVSガラが悪い)
この金峰町あたりは温泉やキャンプ場があってバイクでよく行ったものです。
拉致事件のあった吹上浜の近くです。

純也氏の旧姓は「鮫島」。鹿児島県ではオーソドックス・ポピュラーな苗字。
確かにその出自は朝鮮系のようですが、それは遡ること秀吉の朝鮮出兵の折に
連れて来られたというものです。
司馬遼太郎の『故郷忘じがたく候』にもあるように
その頃の半島出身者は(陶芸)技術者として優遇され尊敬されていました。
薩摩焼きのルーツがそこにあります。

それをいまさら、朝鮮人云々というのは、どんなものだろう。
というか鹿児島県は外様大名関ヶ原以来事実上の鎖国国家だったせいか
名古屋、京都大阪などの関西地区と違って、そういった差別の少ない地域です。
それよりも郷中同士の対立の激しい地域でした(汗)。

因みに日露戦争連合艦隊第二艦隊を率いた上村彦之丞は鹿児島でも
市内加治屋町出身ではなく加世田出身です。奥さんはその南の金山。
彼はウラジオ艦隊をなかなか見つけられずに「露探」とされたが
これも朝鮮系日本人の陰謀なのだろうか?
じゃあ、日本海海戦を決定的な勝利に導いた彼の功績は?

同じ、日本人を捕まえて
やれ朝鮮だ部落だといって陰謀説に結びつけるのは
同じ日本人として恥ずべき行為だと思う。
西郷従道でなくとも
「外国人を侮辱するな」と大激怒したい。いや日本人を侮辱するな!

だいたいが、渡来人の秦氏が島津のルーツなんだから・・・
いったい日本人のなにをして純血日本人とするのか?
アイヌか?沖縄の人たちをか!
じゃあ、どうせだったら鹿児島の「加治屋町」も
陰謀の巣窟だとしてくれ、そのほうがスッキリするんじゃないか。

なんにしても、誰かのせいにする思考法はよくない。
国民、小市民は常に被害者。という考えが時に危険なときがある。
そういった弱者の名をかりたものたちが寄り集まって
マスコミや時流を支配していたりするものです。
歴史に学ぶということは
そういうことでもあるのではないでしょうか。



分類は「若宮」
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