あかんたれブルース

継続はチカラかな

高島鞆之助の憂鬱

イメージ 1

「落合論文」に対する最大の疑問は
薩摩ワンワールドの首領とする吉井友実の後継者が
高島鞆之助であるという点です。

御多分にもれず、わたしも高島鞆之助という人物を
「西郷の後継者と期待されたが後年耄碌した」
という説にどっぷりはまってしまった者でした。

そんな高島鞆之助に注目したのは
児玉源太郎杉山茂丸を紹介した。(堀雅昭『杉山茂丸伝』88頁)
という記述からだった。

しかし、かといって、落合氏が説くように
高島鞆之助や樺山資紀を薩摩派の頭領にするのには抵抗があります。
いえ、嫌いというわけじゃない。
なんというかこの二人には薩摩特有の絵に描いたボッケモンの匂いがする。
山本権兵衛のそれとは違う。
つまり、侍大将ではあっても、総大将の器量を感じない。

高島と同列に扱う樺山資紀の逸話は多いので
こちらを参考にします。

樺山は西南戦争での熊本城攻防戦での勇猛果敢の末の負傷。
薩長政府トカ何政府トカ言ッテモ、今日国ノ此安寧ヲ保チ、
 四千万ノ生霊ニ関係セズ、安全ヲ保ッタト云フコトハ、誰ノ功カデアル。」
の「蛮勇演説」事件。
これにって解散総選挙となり第二回衆議院選挙は近現代史
悪名高き「選挙干渉」の汚点を残し、そして惨敗する。
樺山の(政権側の)気持ちも充分理解できますが、粗忽と状況把握が不味かった。
そして、
日清戦争軍令部長でありながら「西京丸」乗艦の蛮勇行為。
その辺りがこの典型的薩摩剽悍「ぼっけもん」義兄弟を連想させてしまう。

ましてや、海軍大臣を引退した明治25年(1892年)に欧米漫遊の旅に
親戚の赤星弥之助を同行させ、アームストロング社訪問のおり、
不用意にも同社から日本の窓口を紹介してほしいという要望に
「お前(弥之助)の名前でも書いておけ」と名義だけの軽い気持ちで言った。
これが、赤星弥之助に、その息子鉄馬の親子二代にかけて
莫大なリベートをもたらします。(赤星親子はこれを私財私物化して遊蕩放蕩湯水の如く)
しいては、これがシーメンス事件の発端とり、山本権兵衛内閣は木っ端微塵。

立派な薩摩武士だと思う。
でも、なんというか野放図で、思慮が足りない。
陽性で気の良い、勇敢な明治人だと思うけれど・・・

同じ薩摩人でも沈着冷静な大久保利通
陸海軍の対立緩和のために姻戚関係を結んだ川村純義
陸軍の川上操六とは異質なタイプ。
彼らを文治派とするならば、

樺山とセットの高島も典型的な武闘派のイメージをもってしまいます。
これは、落合氏が樺山を引き立てるほどに
わたしの高島鞆之助像が
三宅雪嶺の『同時代史』にある
「豪放磊落、小事に拘泥せず、何人にもともに語るべきを覚えしめるが、
 案外に偏固の癖あり、思い立てることは飽くまでも遂げんとす」
「豪傑肌にして愉快なりと見ゆると、小故を争い、策略を弄すると知らるると、
 人をしてしばしば迷わしむる所にして、高島を信ずる者の損失となり、
 高島自らの損失となる」

こういった人物評価から「到底、大事には堪えぬ」となって
明治政府中枢から遠ざけられていきます。
それを前記の三宅雪嶺
「恐らく第四師団長以後、頭脳の発達が停まり、」と表現しているわけです。

落合氏はこれをカモフラージュだとするですが、
ちと苦しい。

たぶん高島は気の良いタイプだったと思います。
宇都宮太郎などがそんな高島を再度引き上げようと画策したのも
ある意味でその人柄の魅力があったのでしょうが、同時に
コントロールしやすい御輿と考えたのではないでしょうか。
わたしだったらそう思います。私見ですが。




分類は「若宮」
明治男前烈伝(10)堀川辰吉郎(13)近現代史のなぞなぞ(3)
高島鞆之助を薩摩ワンワールド総長とする疑問(1)

ちょっと意地悪なので欄外に記しますが、画像は後年の高島鞆之助のポートレート
つまり頭脳の発育が停止した。顔のアップにしてみました。
目の焦点があってない。(もともとそうなのかもしれないけれど)
男の顔は履歴書といいます。無論、高島の経歴にケチをつけるつもりはない。
でもね、顔はその人を語る。そして目は口ほどにモノを言う。
わたしは後年の高島は人変わりしたと思う。

耄碌とかボケとまではいわないけれど
若い頃優秀だった人が50歳を過ぎて頑迷能力低下に陥るケースは
多い。実際にわたしはたくさん見て接してきていますし、わたし自身が(汗)。
それと、こういったタイプは中小企業の経営者に多い。
ある意味でトップに君臨した者は思い込みが激しくなったりして
「頭脳の発達が停まる」ケースが高いと。これは私見ですが。

歴史でも人変わりはたくさんあります。
「うつけ」だった信長の豹変。家康の前半後半(信長の生前死後)。
秀吉の朝鮮出兵桂小五郎木戸孝允井上馨の維新前と後・・・

高島鞆之助の考察は引き続き
台湾経営とか高島の財政事情から疑問を呈してみます。