あかんたれブルース

継続はチカラかな

親切な外国人

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せっかく、モールスが道筋を立ててくれて
杉山がJ.P.モルガンの合意を取り付けた外資導入は
結局、日本の銀行家たちによって却下。
理由は外資金利が安かった。というとんでもないものです。
つまり国内の金利が高かった。
そのための低金利融資銀行だったのに・・・国益ってなに?

その後、杉山は日露戦争戦費調達にあたる日本債の引受に
米国に渡って交渉しますが、これは失敗しています。
(原因は伊藤博文のケチな了見から(汗))

再び、モールスが登場するのは
日露戦争に入っての後半戦。奉天会戦後、日本海海戦前の時期でした。
陸軍の連戦連勝に沸くとき、杉山は頭から冷水を浴びせられる。

陸軍の機密情報がドイツ参謀本部に漏れた!
この情報はニューヨークタイムズの秘密通信員ナップがつかんだ情報。
それを知らせてくれたのがモールスだった。

日本にはもうこれ以上戦う余力がない。
その具体的な数字が記された陸軍の極秘調査資料です。
これが、ドイツから姻戚関係にあるロシアに渡れば・・・日本は破滅だ。

このときの的確な処理が日露戦争の勝利につながったと考えて過言じゃない。
たとえ、日本海海戦で勝ても。これが漏れていたら日本は破滅しました。

しかし、モールスは親切です。

杉山との関係はないのでしょうが
もう一人、ジョージ・アーネスト・モリソン(1862〜1920)という
ロンドン・タイムズの記者がいました。
モリソンは日露戦争を仕掛けた重要な主犯格の一人です。
「北京のモリソン」は青木宣純大佐らと組んで様々な情報交換をした。
これはタイムズの仕事の範疇を大きく越えたものだった。

モリソンは、英国人じゃない。オーストラリア人です。
彼の目的はロシアの太平洋戦略が自国オーストラリアに厄災をもたらす。
それを駆逐するために
どうしても日本がロシアと戦って勝って欲しかった。

こう書くと、なにやら陰謀戦略めいて冷ややかな感じですが、
「東アジア、太平洋の平和のため」とすれば世迷い言でしょうか。
国益地政学、国家戦略は存在する。
するけれど、それはそれ以上でも万能でもないのです。
みんな必死なのですね。
それほどにロシアは問題児だったのです。
英国にも、米国にも、オーストラリアにも、清国にも・・・

その後(日露戦争後)の日本の変容にモリソンは愛想を尽かします。
児玉死んで、青木も死んで、日本は迷走していった。

とても親切だった米国。(無論そこのは国益という目論見もあったとしても)
日露戦争日本海海戦日本海軍がロシア艦隊を殲滅させたことで
一転、米国にとって日本は仮想敵国になってしまうのです。

太平洋において、日本の海軍が最強になってしまったから。

杉山茂丸は凄い人物だったけれど、
その力を充分に発揮できたのは児玉源太郎というパートナーがいたからですね。
ある意味で、これが杉山茂丸の限界だったのかもしれない。

というか時代の流れでしょうかねえ。

参謀本部は川上操六から児玉に受け継がれ情報の重要性を確立させて
福島安正に継承されるはずでしたが、福島と情報重視戦略は封印され、
参謀本部は暴走していきます。


はて、薩摩ワンワールドはなにをしていたのか?
上原勇作はなにをしていたか?



分類は「若宮」
明治男前烈伝(10)堀川辰吉郎(13)近現代史のなぞなぞ(4)
杉山茂丸の存在の捉え方(4)
画像はジョージ・アーネスト・モリソン。
その活躍は『日露戦争を演出した男モリソン』(新潮社)で楽しめます。