さて、穏田の行者・神様といわれた飯野吉三郎の名誉のために
というかわたしが飯野の弁護をするのも変な話ですが
これまで飯野を扱う書籍類が
すべて詐欺師扱いのレッテルを貼り付けているので
すこしフェアに紹介します。
疑惑（1）「白木屋事件」
明治29年6月24日、日本橋一丁目呉服店白木屋にて
私塾（「日本精神講談」牛込天神町）経営者・飯野吉三郎は
150円の買い物（現在の約100万円）をしたにも関わらず
代金未払いで、取立の手代に対して刀剣をもって追い払った。という恐喝事件。
弁解の余地なし。ですな。
実刑一年。ただ、大正13年に復権消滅しているそうです。
ひとつは、飯野のズボラという特徴でしょう。
弁護するとすれば・・・悪気はなかったのよ。でしょうか（涙）。
詐欺するような計画性はなくて、どこか世間離れした幼稚なトラブル
と、一応してみていただけないでしょうか（汗）。
疑惑（2）旭事件（旭貯蓄銀行事件）
これは、銀行側が悪い。飯野は被害者といっても差し支えなし。
疑惑（3）下田歌子との愛欲関係
いくら美貌の持ち主とはいえ、年齢が12、3歳年上の歌子。
というか、下田歌子は飯野の結婚（といっても側室のような）の
斡旋（自分の教え子）をしていたりする。
また、当時の新聞がかき立てた下田スキャンダルに飯野の名は出ていない。
むしろ伊藤博文とか無名の若者とか。
これらもスキャンダル煽動にニュアンスです。
わたしには下田歌子は超堅物才女に感じるのですけどね。私見です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B%E7%94%B0%E6%AD%8C%E5%AD%90
疑惑（4）大逆事件
これに飯野が関係していたというのも下田との不倫不道徳関係を
幸徳秋水の「平民新聞」で大キャンペーン連載したことへの
復讐説からのようです。
今日、大逆事件は官憲のデッチ上げと認められています。それはいいとして。
そうなると、余計に幸徳秋水は悲劇の、正義のシャーナリスになるのですが
大逆事件の件は横において、
わたしは幸徳秋水があまり好きじゃない。師匠の中江兆民は好きですよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B8%E5%BE%B3%E7%A7%8B%E6%B0%B4
幸徳秋水が嫌いなのは結婚式で相手の容姿が気に入らないといって
酒に酔っぱらってそのまま遊郭にとんずらして離縁する。その態度が、なんかね。
それに菅野スガとの関係もただれてだらしないイメージです。
菅野スガは可哀想な女性ですが男にだらしない。
そして、獄中にあった後輩の荒畑寒村の妻スガを寝取った幸徳秋水も
だらしないよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%A1%E9%87%8E%E3%82%B9%E3%82%AC
これだったら飯野の艶福家楽しく明るい大家族のほうが好感もてますな。
どっちにしろ、飯野と大逆事件は関係はないようです。
すべては、当時のマスコミの後付推察に域を出ない。
それを信じられてしまうところが飯野の不肖ではなりますけれどね。
自業自得？
なんにしても、下田歌子妖婦説も大逆事件、そして
飯野の関与もイメージ先行の捏造誤報と結論付けます。
事件の背景は山県有朋だ。
しかし、飯野と山県はそう悪い関係じゃなかったはずが・・・
ところがさ、たとえば山県の腰巾着とされてどうしようもない寺内正毅。
この寺内が山県から排除されそうになっています。
なんか、山県と寺内という長州閥一味の解釈が揺らぐなあ（汗）。
飯野同様に
もう一度、寺内正毅というスケベ大王のイメージを払拭させて
見直す必要があるのではないかと思うのでありました。
スケベでもいいじゃないか。伊藤博文も松方正義も飯野も馬太郎もスケベ。
スケベ万歳！
そのキーワードは児玉源太郎ですね。
もし、寺内正毅が無能でイヤな奴だったら児玉は姻戚関係を結ぶか？
いくら同期だからといって。
ましてや、杉山も寺内とは懇意にしていました。
そりゃ、寺内の能力は児玉に比べたら落ちます。でも司馬さんがいうほど
どうしようもないバカじゃなかったのかもしれない。
以前最初にそう感じたのは森鴎外の脚気細菌説を
寺内が強権発動で否定して麦食に替えた件からでした。
もうすでに日露戦争は終わりの頃でしたが
あのまま続いていたらさらに1万人は死んだかもしれません。
そして、飯野に関しても児玉源太郎と山県有朋の存在が
キーワードになりそうです。
分類は「若宮」
明治男前烈伝（10）堀川辰吉郎（13）近現代史のなぞなぞ（17）
疑惑の検証には飯野官吉『穏田の神様』を参考にしました。
豊富な資料提示とフェアな論理立てで良い資料本です。
