あかんたれブルース

継続はチカラかな

イヤな奴でも本物ならば良し



山県の話でした。

とかく評判の悪い人です。
平民宰相原敬は山県に対して「卑しい」という表現を残しています。

これは、山県が長州藩でも最下層の足軽出身という身分の卑しさと
そういった環境で育まれた山県有朋人間性の卑しさを指す。

そりゃそうだと思う、けれども
わたしは原敬が好きじゃない。じゃあ、お前は何様だと。昔から反発してた。
原敬は平民宰相として歴史に名を残していますが、
平民といっても盛岡藩の家老職の出ですからね。
彼が頑なに爵位を拒絶したのは、そこに彼の政治生命がある。といってもいい。
穿った見方のようですが、これに関しては、そうなんだ。
この人も山県に負けず劣らず強かな人物です。

お前が、山県のこと言えるかよ!

第一、 その山県に最終的にはすり寄っていったじゃないか。とかね。

でも、なんかそういった自分の姿勢っていうのが
厚化粧の小ブスのかげ口に怒って絶対ブスを擁護して、下手したら
「彼女は俺が守る」なんていいそうで、つらい(汗)

だからずっと黙っていました。

確かに、山県は悪い。

山城屋和助事件以前にも戊辰戦争奇兵隊の給料ピンハネとか・・・
西南戦争以降、焼け太りでそのたびに別荘を拵えていく。
そのくせ、「一介の武弁」とかいって、粗食をアピールする。
悪名高き保安条令やら選挙干渉やら率先してやったわけです。
大逆事件の黒幕とも言われている。

どこに出して恥ずかしい。嫌われる、爺。
こんな男を擁護なんてしたら、馬太郎の見識が疑われて総スカンです。

でもさ、かといって
伊藤博文暗殺の黒幕とまでいわれると、ちょっと待て。と

歴史改ざんの権力者として、陰謀説の裏付けにされると、おいおい。と

なんか火中の糞を拾うようで、墓穴に入ってゾンビを救い出すようで
微妙だけれども、すこし非道いと思いました。
わたしにそんな勇気を与えてくれたのは、やっぱり杉山茂丸だった。

打倒!藩閥政治とした杉山がその藩閥の首魁である山県とは昵懇だった。
杉山は作家夢野久作の実父ですが、杉山自身も文筆家である。
彼は『児玉大将伝』(子供向けも含めて2冊)とか、
桂太郎明石元二郎、八代六郎などの伝記も書いている。

ちょうど、山県が死ぬ一年前か宮中某重大事件の前だったでしょうかね。
「俺のも書いてくれないか。ただし、あまりよく書いてはいけないぞ」

と、あの、山県が言った。

杉山は生返事はしたけれど、そのままほおっておいたけど。
宮中某重大事件で憤死します。
最期の言葉は「みなさんお世話になりました」

でね、杉山は書くんだな。山県の伝記を

丁度、昨日お話した故郷福岡で、同志の霊前で藩閥政治終焉を報告した後です。

なんかさ、杉山の「愛」というものにふれて
わたしはとても感動してしまい、泣けてくるのだった。

誰も評価しない。悪い人間。はたして、山県はそんなに悪人か?

その死に対して、その葬儀に、
石橋湛山はその死を「死もまた、社会奉仕」と評した。

もっと悪い奴は五万といるさ。
杉山は善人悪人で人を観ない。本物か偽物かで判断して、
本物と付き合っていくことを誓った。とすれば、
山県有朋は悪人かもしれない、イヤな奴かもしれないけれど、
本物だったことになります。

そして、山県は杉山茂丸を信頼していた。

原内閣の仕掛け人は杉山茂丸でした。けれども、原敬は杉山を信頼しない。
なんか皮肉ですよね。