あかんたれブルース

継続はチカラかな

これがペンだ!

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メディアと民主主義(12)


報道とは難しいものです。
真実とはなにか? 情報はどこまで必要なのか?

関東大震災が起きた。

大正12年9月1日土曜日午前11時58分32秒
震源地は神奈川県相模湾北西沖80km
マグニチュード7.9

* 死者・行方不明者 : 14万2800人
* 負傷者 : 10万3733人
* 避難人数 : 190万人以上
* 住家全壊 : 12万8266戸
* 住家半壊 : 12万6233戸
* 住家焼失 : 44万7128戸(全半壊後の焼失を含む)


東京の新聞社は壊滅状態です。情報を発信できない。
東京朝日新聞も同じ。

もともと日本の新聞は読者からの投書で成り立っていた。
それが復活したかのように、デマや流言が記事に採用されていく。

東京(関東)全域が壊滅・水没
津波赤城山麓にまで達する
政府首脳の全滅
伊豆諸島の大噴火による消滅


そのなかで、朝鮮人の暴動が報じられる。

これがもとになって多くの在日朝鮮人中国人が暴行虐殺されました。
私たち世代の祖父母の時代ですから生の話を聞いたものです。
実際にわたしの友人のお祖父さん(江戸川区在住)は当日日本刀を肩に背負って
「これから朝鮮人を斬りにいってくる」と駆けだしていったそうです。

朝鮮人が井戸に毒をまいた放火した強姦した・・・

これはまったくの誤報だった。情報が民衆を狂わしていきます。
この情報の最初の発信源はどこか?誰か?

正力松太郎だといわれている。ええっ?正力?読売新聞の?

犯人は正力松太郎。しかしまだ読売新聞の社主じゃない。
虎ノ門事件でクビになる以前の警察官僚だった頃。
当時の肩書きは警視庁官房主事です。

焼け出された各社の記者たちが、警視庁(官房)に食糧が集められているという
情報を嗅ぎつけて正力官房主事を直撃取材した。
正力官房主事はそれを追い払いたかったのでしょうか、つい
朝鮮人暴徒化の噂が流れている」と口走った。

つい、ではすまされない。
警察組織の官房の主事が言った言葉に、記者は一斉に奔った!
また、それに連動して
内務省警保局は各地の責任者への(公式)訓電に
「東京付近の震災を利用し、朝鮮人は各地に放火し、不逞の目的を遂行せんとし、現に東京市内に於て爆弾を所持し、石油を注ぎて放火するものあり。既に東京府下には一部戒厳令を施行したるが故に、各地に於て充分周密なる視察を加え、朝鮮人の行動に対しては厳密なる取締を加えられたし」

上から下までパニック状態となります。
これも日頃の行いの悪さからの負い目でしょう。
しかし、被害者はたまったものじゃない。

朝日新聞も例外じゃない。率先してやった。
日比谷焼き討ち事件、鈴木商店焼き討ち事件の反省なんてない。
非常時だから、治安維持のためだから、平和のためだから・・・
上の記事は大正12年9月3日の大阪朝日新聞の号外での
東京朝日新聞社員早川記者の(甲府)特電ですが
朝鮮人の暴徒が起つて横浜、神奈川を経て八王子に向つて盛んに火を放ちつつあるのを見た」
とある。早川君、君は本当にそれを「見た」のか!

先月の防災に日に関東大震災に関連して朝鮮人虐殺の記事を目にしました。
それは本当です。その通り。
でもさ、「○○な一般市民を狂気に奔らせた」のは
官憲というよりも新聞だったんじゃないかな。
というのも、命がけで朝鮮人をまもった警察官もいたわけで、
軍隊も保護した。そんなエピソードが「Wikipedia」にあってホッとします。

善良という言葉が空しくなるときがある。

できれば、正力は虎ノ門事件の責任で懲戒免官されるのではなく、
この「発言」での責任を追及され、処罰されて欲しかった。
「報道、言論の責任」についてみっちりと。

さて、それはそれとして、善良な市民の代弁者である
新聞社はどう反省したのだろうか?
自分たちがこれまでやってきたことに疑問は感じていたのか?

マスコミが力をもっていく。
高学歴、高給からパワーエリート集団は確実に育っていった。
ペンは剣よりも強いというけれど、
そのペンは諸刃の剣でもある。

そのことをドリフターズ元メンバーの荒井注(故人)は
こう表現していた。
This is a pen.