あかんたれブルース

継続はチカラかな

さよなら馬太郎さん



その日の三人会議はとても楽しかった。
一都五県から六人のおバカさんは引き寄せられて
電車で、バスで、飛行機で、上野不忍池に集ったのさ。

それぞれの日常は
現場で汗を流すもの、牛の乳を揉むもの、鮮魚と格闘するもの
腰痛に苛まれながらシコシコする者、癒す者など
みなそれぞれだけれども
なにも彼らを阻む囲いなどないかった。

二十代から、三十代、四十代、五十代と年齢も様々だけど
ジェネレーションギャップさえもない。
酒が飲める飲めないも関係ない。
男女云々も関係ない。


今回は写真のアップしないと春風さんは決めていたので
デジカメはもって来なかったけれど
自由人さんはあまりの楽しさにケータイでスナップを
撮っていた。

午後四時を過ぎると
馬太郎さんはそそくさとブルーシートを畳んで
みんなとハグして帰っていった。
上野のファッションビルABABの細い路地から鶯谷に向かい
谷中霊園のほうに消えていった。

それぞれが帰路に就く

帰りの
中央線で
頬が緩みっぱなしの自由人さんは
思いだしたようにポケットからケータイを取りだして
さっきの宴のスナップ画像をながめてみた。

春風さん、つ〜たんさん、んんっ・・・
馬太郎さんが写っていないなあ
あれ、ルイさんに撮ってもらった集合写真
ここにも写っていない。
なぜなんだろう・・・

そのときは酔いもあって
そのまま気にもせず、甲府に着くまで寝てしまった。

翌日、ニヤニヤしながら仕事をして、
また思い出すとケーターをながめている自由人さん。
それにしても、なぜ馬太郎さんは写っていないんだろう。
恥ずかしがり屋、ってことはないよねえ。あの性格、あのキャラからして・・・

なんか、気になって
馬太郎さんのケータイに電話してみた。

「ただいま電話にでることができません」

それから翌日までずっと通じない。

なんか気になって、
以前メモしておいた自宅の固定電話に電話してみた。


モシモシ下馬さん(馬太郎さんの名字)のお宅ですか?

はい、そうですが。

電話には御婦人が出た。

太郎さん(馬太郎さんの本名)はご在宅でしょうか?

えっ?

一瞬戸惑った御婦人の声に、自由人さんは何か不味いことを
しでかしてしまったかと不安になった。沈黙のあと、
御婦人はこう言った。

「宅の主人は十年ほど前に亡くなっておりますが、
 どちら様でございますか?」

えっ、


死んだ? 十年前に?