あかんたれブルース

継続はチカラかな

渋谷道玄坂百軒店横丁



あれっくさんのコメント返信のつづき

ノリさんが、アッチをはじめて法善寺へ
つれて来てくれはったのは『磯ふらぼん』に奉公に上がった晩やった。
はよう立派な板場はんになりいや云うて、長いこと
高幡不動さんにお願いしてくれはりましたなあ。
あの晩から、アッチは、アッチは、こいさんが好きになりました。

もしや、あんたはんは磯野範子はんやあらしまへんか?

アッチはノリさんにそう聞いてしもうてから、しまった!と思いまひたんや。
ノリさんは悲しい顔で目を伏せて首を横にふって言いはった。
「あては、『磯ふらぼん』の養女となった磯屋のふらぼんノリ子だす」
「ケッタイナな名やなあ。ガムか歯磨き粉みたいでっせ」
「ほっといてんか」
「堪忍しとくれやす。この口が勝手に宣いまんねん」
「そんなことよりあんた、わてを好きなら日本一の板前にならんとあかんで」
「任しといておくれやす。腕に自信がありまんのんや」
「あかん、あんたトコブシとかアワビとかよう扱われへんのやろ」
「えっ、それは・・・あきまへんのやトラウマが」
「アホ! そんなことでどうるんや。早よせんとわてはお嫁にいかされていまうで」
「ノリさん、アッチはこれから腕を磨く修行の旅に出まっさ」
「まあ、なんて行動力のあるお方(ポッ)」


包丁一本 さらしに巻いて 旅へ出るのも 板場の修業
待ってて ノリさん 哀しいだろが
あゝ 若い二人の 想い出にじむ 法善寺
月も未熟な 十三夜


アッチはそれから山手線に乗って浜松町でモノレールに乗り換えて
羽田の空港に向かいましたんや。
そしたらなあ、搭乗手続きでブザーが鳴ってしもうて
持ち物検査をしたらサラシから包丁がポロリ・・・
取り押さえられてそのまま大森署に連行されました(涙)
何度も修行や板目やいうても聞いてくれへんのだす。


腕をみがいて 磯ふらぼんに戻りゃ
晴れて添われる 仲ではないか
お願い ノリさん 泣かずにおくれ
あゝ いまのアッチには 親方はんには すまないが
縄の暖簾にゃ チン立たぬ




つづく


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