あかんたれブルース

継続はチカラかな

龍馬暗殺の黒幕に異論アリ!



テレビ東京の歴史ミステリーの年末番組で
龍馬暗殺の黒幕というのがありました。
ちょうど風呂上がりで、その段をやっていっておりまして
パンツ一丁でテレビの前で立ち見しておりました。
番組途中でしたが、
下手人とみられる見廻り組の某氏はその後静岡藩の庇護を受ける。
そこで、その黒幕は・・・と引っ張っていたところだった。

静岡藩・・・
思わず「勝海舟!」と声をあげた。
妻から、ちょっと邪魔。と非難を浴びて、一歩二歩後退すれば
テレビのナレーションは「勝海舟」と続けた。

ほらね。

妻には得意気にそう言い残し、
パジャマを着込んみに別室に向かったのですが
勝海舟とはねえ・・・
そうはいった馬太郎ですが、龍馬暗殺の黒幕を勝海舟なんて思ってはいない。
静岡藩を出したので、もしかしたらと思って、そう言ってみたら、
そうだった。という具合なだけです。

着替えて、茶の間に戻ると
容疑者勝海舟の動機をあげていました。
龍馬が記したとされる新政府のリストに勝海舟の名がなかった事と、
例の○○○の人物が「徳川慶喜」だったことが決定的な動機だったとか。

しかし、この推理は出来が悪い。
正月にその事を義弟にぼやいていると
彼がNHKの歴史謎解き番組の録画を見せてくれた。
同様の内容で、テレビ東京はこれをベースにしたようです。
当然、NHKは黒幕が勝海舟とはしていません。
テレビ東京はそれを一歩踏み込んで、というかいささかフライング気味。
おもしろけりゃいいか、どうせ娯楽だしって感じせすかね。

しかし、面白くはない。
別にわたしが勝海舟ファンってことじゃなくて、
その推理は面白くないというか、センスがないというか
シラケてしまう。

以前もこのブログでフリーメイソン陰謀説の
加治 将一『あやつられた龍馬』で
龍馬暗殺の下手人を中岡慎太郎とした点でダメだしをしたものです。

この勝海舟説もそれに匹敵する所謂「ゲスの勘ぐり」だな。
週刊文春の龍馬梅毒説に近いかもしれない。

文藝春秋社出身の歴史作家中村彰彦
島村速雄を主人公とした『海将伝』などで親しんでいた作家でしたが
氏が勝海舟のことをコキ下ろすエッセーを読んですっかり嫌になったものです。
理由は「ゲスの勘ぐり」なのだ。そしてセンスがない。
また、会津征伐で薩摩兵が生き肝を喰らうという点を執拗に
批判していた点も辟易したものです。
ま、それより『海将伝』のあとがきで同じ文藝春秋社出身の先輩の
文章が同じ穴のムジナを立証していたのがとほほでしたけどね。

わたしの好きな児玉源太郎の伝記本に代表作『天辺の椅子』がある。
この作者古川薫も代表的な歴史作家ですが、この人もセンスがない。
それは児玉が先輩の桂太郎に嫉妬してみたり、総理の椅子を狙っていたりする
解釈にある。作品もそこからきている。
資料本としてはいいですが、そういう点を踏まえればアウト。
作者の弁明があるとすれば「読者の視点で」というかもしれませんが
それは詭弁に過ぎない。

日本の出版界、ジャーナリストや文筆家のレベルは
戦後低レベルに堕落してしまったことを
『おそめ』という本で知り、大きくうなずくのでした。
確かにそれはいえる。

疑わしくは罰せずなのか罰せよなのかわからないけれど、
そこに言論や表現の自由があるのなら尚のこと
うなずける名推理をお願いしたいものですプロならば。

わたしが、静岡藩と掛けて勝海舟と声に出してしまったのは
むしろ別な意味からでした。
そっちからのアプローチのほうが、もっと歴史は楽しめると思います。
機会があったらその辺りから人間勝海舟を探訪してみください。
テレビ東京が考えるような、中村彰彦がいうような、
そんな人物じゃあないよ。

疑うのであれば、もっと違うところだ。
それじゃあ金田一耕助シリーズの等々力警部じゃないか(汗)