あかんたれブルース

継続はチカラかな

魔法使いの食卓



ニブタニブタとルイちゃんが宣っております。

「東北の祭か?」

「それは『ねぶた』やろ。煮豚や!」

「風呂にでも入るのかい?」

「煮豚、美味しいなあ・・・ネギが安かってん。煮豚作るで」

ネギで、煮豚・・・?
なんか禁じられた童話『ちびくろサンボ』で
虎がグルグルでバターになってホットケーキを焼いたような
不思議な感じの展開です。

ルイちゃんはどこに出しても恥ずかしい貧乏人ですが
料理やおやつ作りはマメで
八百屋で見切り品の傷みかかった果実を買ってきては
工夫してゼリーやらお菓子やら色々作る。
お陰でお嬢は肥えて腫れてぷりっぷりのチェーン物食う妖怪人間みすず。

煮豚は豚肉とネギを電気釜に放り込んで醤油とコーラで煮込むそうです。
コーラってとこが凄いね(汗)
ルイちゃんの料理はワイルドですがセブンでバンチでスワンだ。わかるかな?
しかもサクサクと手際よい小気味よい。長屋の落語のようです。上方ね
食に対するこだわり、執着、愛情でしょうか
ちょっとした素材を大河ロマンに仕立ててしまう巨匠だ。
いや、魔法使いのようです。

むかし小学校の国語の教科書で壺井栄だったかな、『二十四の瞳』の。
その短編で母親の手を描写するものがありました。
母親の手を魔法の手だと表現していた。
煎った空豆を子供達に分け与える母親の手は
無造作のようだけれども、いつも同じ分量なのだと
作者は驚いていたものだという回想のまじった作品でした。
というかそこしか憶えていないけどね(汗)。42、3年前の話さ。
子供にとって、母親は魔法使いのようです。優しい魔法使い。
シャボン玉とか卵焼きの匂いのする・・・

ルイちゃんのようなお母さん・・・いいなあ
お嬢が羨ましい。

わたしの母親は調理師の免許を持っているが自慢ですが
(戦時中に山科の軍事工場で食堂係だったことから取得したものです。)
料理が下手くそで、そしてセンスがない。
なかでも味噌汁に鰹のアラとソーメンとヘチマを入れるので
具が汁を吸って、汁が吸えないなんて日常。天然の無常でしたな〜あ。
味噌汁にヘチマいれるなよ!


ルイちゃんの日々の献立の話を聞くたびに
お伽話を聞かされているような錯覚に陥ります。
どかこ関西の山小屋でタヌキがチチンプイプイしているような。
思いついてはドーナッツを揚げる。
一から作る酢豚、サワラの煮付け、自家製おかずお好み焼き、海老フライ・・・
しゃもじを舐め舐めお嬢がおひつを抱えて待っている。

なんというか豊かさを感じる。
私達がうっかり忘れてしまった豊かさがそこにある。
エアコンはないけれど、それはある。