あかんたれブルース

継続はチカラかな

うっかり八兵衛の揚げ足取り



私達は迂闊だった。

例え話というか、実話です。ちょと昔の話ね。

敗戦後、戦犯が巣鴨プリズンに収容されました。
最初はA級とBC級は別々でしたが、やがて人数が増えて、
雑居房A級戦犯もBC級もごちゃまぜに収容されます。
それと同時に食糧事情の悪化から食べ物の奪い合いになってしまう。
同じ房のなかでの奪い合いは当然です。
こうなるともと大臣だろうが将軍だろうが下士官だろうが関係ない。
若い人間は食欲旺盛です。年寄りは食欲はさほでなくとも生命に執着する。
人間の地金がもろにでるわけですね。
隣の房とで、食糧の奪い合いがはじまります。
通常の食糧の半分ぐらいですが、片方はそのまた半分ぐらいになっちゃう。
四分の一ですからこれじゃあ足りません。

このことを所長に陳情しようと考えるのですが
年寄り格のA級戦犯たちは心証を悪くするという理由で後込みする。
知恵が働く分、役にたたないものなのです。

若かった笹川良一はそこで一計をもって所長にネゴしようとした。
その矢先、大川周明松井石根が「隣の房が食糧を盗む」と文書で訴えた。
これで笹川の計画はおじゃんです。

笹川は隣の房とこちらは房の食糧の差は不公平だという主張で抗議するつもりだった。

つまり、もともとの食糧が少ないわけです。これを半分と考える。
それを奪い合うので片方が75%で片方は25%ですね。
そこで笹川は不平等を訴えて、隣の房同様に食糧量を改善せよとする主張だった。
不平等は管理者責任ですからね。この主張がうまくいけば
笹川らの房は、隣と同様に75%にあがるわけだ。
双方、25%アップになります。それでも通常の25%は少ないけれど、
本来は50%少ないわけですから。

しかし、大川や松井の交渉で改善させたのは最初の50%ずつで
ノープロブレムなのだ。

大川周明っていえば帝大出で当時の思想界の巨人です。
松井は陸大首席卒業で特務機関長のエリートだ。
対して、笹川は尋常小学校高等科卒ですから現在でいうと中学二年までの学歴。

物の考え方っていうもの、それによる交渉のツボっていうのが
ここでの大きなポイントであり、
そこには学歴とか学識が関係ないということを教えてくれる逸話ですね。

交渉事が下手っていうのが日本人の専売特許のようにいわれていますが、
それは別に日本人の特徴ってわけじゃない。
そういうのは個人差というか個性特性のセンスのようなもので、
学者や優等生にはなかなか芽生えないものかもしれません。

で、もうひとつ
ここでよくある私達の迂闊さは、
「なんだ笹川なんて、右翼の首領。黒幕のボスじゃないか」
として、拒絶反応を起こして、この話を根底から受け付けない。
ここで、笹川良一が右翼だろうがやくざだろうが関係ありません。
もうとっくに死んでしまった人じゃないか。
それに、もっと訳知りの人だったら、なんで巣鴨に笹川がいるの?
って思うのが筋です。
一番面食らったのがGHQだと思いますよ。

豊かさは人間を幼稚化させるというそうです。
正義か悪かという二元論二極論だと思考停止になって
そのうち訳解らなくなってしまう。


原発問題で、広瀬隆氏や武田邦彦氏の発言が注目させれいます。
まったく異なったスタンスですが、双方共通するのは原発が危ないってこと。
もうひとつの共通点に両氏とも事故以前からその主張をパッシングされてきたことです。
確かに、広瀬さんは扇情的かもしれない。
武田さんは大雑把だったかもしれない。
でもね、それを批判する側の批判は理論的なようでもあるけれど
その手法は言葉尻を捉えるものが多い。
ここに意図的なものがあたかどうかはここでは触れませんが、
なんか大筋を枝葉の揚げ足取りで全面否定の論拠にする得意の手口だ。

大事なのは飯の量を増やすことであるわけじゃないか。
揉め事の元はそこにあり、死人だって出ようとしてるわけだ。

大事なのは原発が危険な代物だってことで、
すべての厄災はそこにあるわけだ。死人だって出ようとしてるわけだ。

私達は迂闊で、危険なのを承知の上で
危険か安全か、全廃か推進かで揉めている。
そんな馬鹿な話はないじゃないか。

危険なの。

で、どうやってソフトランディングさせて方向転換するかだけなのだ。
これで、いいじゃないか。他に何を揉める必要があるのか?
揉めるんじゃなくて、考えて行動に移そう。