あかんたれブルース

継続はチカラかな

三つ数える前に



「ねえジャック、そんなに難しく考えないで
 気楽にいきましょうよ。私たちのためにも」

ジェシカ、君の意見に賛同する気はないんだ」

「こんなバーチャル世界で力んでも仕方ないわよ」

「何度もいうように、わたしはネットとリアルを使い分けしない」

「相変わらず頑固ね」

「それでとくに不便を感じていないんだ」

「新しい共同体の再構築ですって?
 お笑いね。一匹狼っていわれたあなたから
 そんな言葉を聞くとは思わなかった」

「わたしのことなどどうでもいいのだ」

個人主義を否定するのね。できるの?
 世間知だって否定しかねないのよ」

「人間が一人で生きていないことを
 否定できるものはいないのさ」

「ズルイ論法ね。でもうわべは納得してみせても
 本音は面倒くさいでかたずけられてしまう。
 冷ややかに嗤われるだけよ」

「それは各自の選択だ。
 それを言い訳にしだすとなにもできなくなる。
 恋愛も人生もすべて面倒くさい代物だ」

「あら、わたしは面倒くさくないわよ」

ジェシカ、それ以上近づかないでくれ」

「女性に拳銃を突きつけるわけ」

「君の美しさは凶器だ」

「恐いの?」

「生憎、小ブスが好みでね」

「悪趣味ね」

「動くな」

「私を撃てるの」

「どう思う」

「あなたに私は撃てない」

「賭けてみるか」

「ジャック、私を抱いて・・・」




バーン




 言っただろう。
 小ブスが趣味だって




早河ミステリー文庫ハードボイルドダド列伝
ジャック・スパナー(1)