あかんたれブルース

継続はチカラかな

『坂の上の雲』と『人間の条件』の違い

暴力を考える(リターン)


なんで、『坂の上の雲』が面白いか、と考えるに
理不尽な旅順攻略の第三軍指揮官たちに対する
児玉源太郎のキツイ一発があるからだと思う。

読者は「そうだそうだ!」と胸がスーッとするわけだ。

よく言ってくれた、よくやった、児玉かっちょいー!

でね、五味川純平『人間の条件』という超大作があります。
全六作。今年の夏にBSで一挙公開してました。
この第三作だったか、四作だったか
舞台は中国戦線の陸軍部隊
ここで古参兵による新兵の陰湿強烈なイジメがある。

そりゃあもうヒドイ。

主人公の梶(仲代達也)が我慢に我慢を重ねて
遂にブチキレ!
そんときわたしは身を乗り出したよね。
頭皮の毛穴が開いたもん(笑)

よし、やれ。やっちまえよ。

しかし、やらないんだな。
勝新太郎だったらやった。
三船敏郎は軍隊時代に実際にやってました。
新兵を庇って、上官と喧嘩してた。

でも仲代達也はやらない。こっちは劇中の話ですよ

これがこの作品のつまんないところ。
そして仲代達也がつまんな役者の証なのだ。

とても後味の悪い映画です。

実際の現実はそうだって?

いや、違う。これは作り物だ。フィクション。
「軍隊のイジメはあった」
ありましたよ。あった。でもね、
ここまでイジメをやるとどうなると思います?
戦闘中に後ろから撃たれるそうですよ(汗)
復讐されるのだ。
あたり前なもです。因果応報ってやつ。マジです。
だからこの古参兵のイジメも少々デフォルメがある。

だからそこまで追い込むとヤバイことを
やるほうも知っている。
なかには知らないアホもいたことでしょう。ずどんです。
なんたって全員銃器を所持してるんですからね。

それとまた担当指揮官の責任問題にもなるわけだ。
そういう将校の質の低下もありました。
これが虐殺行為の理由のひとつとされています。
日露戦争の頃は、そうじゃなかったわけです。


で、このつまんない役者の仲代達也が演じた
二百三高地』の乃木希典は、絶品でした。
目が虚ろで、明後日を見つめている。
仲代達也一世一代の名演技。『用心棒』のガンマンもいいですが、
こういう惚けた役がいいんでしょうね。
因みに児玉は丹波哲郎でした。これも最高だった。

『人間の条件』の後味の悪さと対比して
仁義なき戦い』特にシリーズ第三作の『代理戦争』は
大変小気味意良いものです。

勝新の『兵隊やくざ』よりもよりリアルに
理不尽な打本というどうしようもない親分を
菅原文太演ずる広能昌三がギャフンと凹ますからだ。

以前、「週刊大衆」の元記者が言ってましたが
サラリーマンが暴力団物を好むのは組織内の鬱憤を晴らす
絶好のストレス解消剤なのだと分析しておられた。
その意味では、城山三郎高杉良も同じ効用なのでしょう。

しかし、
理不尽なイジメや横暴に対して
実際問題としてどう対処すべきなのでしょう。
長いものには巻かれろ、か
沈黙は金、か
君主危うきに近寄らず、か
じっと我慢の大五郎、ちゃん!、か