あかんたれブルース

継続はチカラかな

愛を求める人



は、多い。けれどもなかなか満たされない。

なぜか?

求める一方で、決して与えないから
確認することばかりで
始終している。

勇気がない。

愛されることで、満足・・・
しかしそれは一過性のもので
持続しないのだ。

循環されない。



それを確認しようとする女がいた。
彼女は同じ男と二度しか寝ない。

どんな男でも落とせる魅力と自信があった
たいがいの男たちは落ちる
落とすたびに満足はするけれど
安心はするけれど
こんなものさとすこしがっかりもする。

そして確認するために抱かれてみて
落胆してしまう。
セックスってこんなものなの
思い描くそれとはかけ離れた男女の営み
もう一度、確認してみるけれど
結果は同じ

まるで愛のジプシーのよう・・・



そんなんじゃいつまでたっても満たされない。

「あなた誰?」

ボク馬太郎21世紀の世界からやってきた
ケビン・コスナー型ナイスミドルのおじさんさ。

「ふん。どうせわたしの体が目当てなんでしょ」

そんなこというもんじゃないよ。
君とボクは未来で結ばれる。

「ええっ?笑わせないでよ。わたしはハゲには興味ない」

ボクはハゲじゃない! 21世紀のケビン、

「はいはい尿瓶コボスナーでしょ。こぼさないでねお爺ちゃん」

ボクはお爺ちゃんじゃない! 21、

「よして。気が散るわ」

なにしてるの?

「男の値踏み、物色中」

来週は結婚式だろ

「なんで知ってるの?」

なんでも知ってるよ。本当は友達のお兄ちゃんが好きだったんだろ。
でも妊娠しちゃったから他の男と結婚するんだ。
そのことをお兄ちゃんにさっき電話で話したら最後にもう一回やらせて
といわれてすっかり男に幻滅してしまった。
なのにまだ確認しようとしてる。

「あなた誰?」

なんでも知ってるよ。
君の好きなもの嫌いなもの
たとえば君は焼き鳥が嫌い。鶏肉すべてがダメだね。
それは小さい頃にお祭りの屋台で買ってもらったヒヨコを
育てて飼ってたらワトリに成長した。
ある日、学校から帰ってきたらニワトリがいない。
名前はつけていなかったけど
家の人に聞いたら近所の親戚の人にもっていってもらったって。
君は大急ぎでその家に走った。
その家の前にドラム缶があって、そのなかに毛を毟られて
吊るされたかわり果てた姿を発見した。ショックで
それから君は鶏肉が食べられない。触ることさえできない。


「どうして知ってるの?」


君から聞いたのさ。


「ワタシ・・・から?」


君の好みのタイプはヤンキーで強そうなマッチョ。
自分を守ってくれそうだから。
でも彼らはそんなに強くない
彼らは、
自分のことで精一杯で自分のことさえ守れない。
君を守るなんて無理だよ。

「神様?」

違うよ、21世紀のケ、

「どうして知ってるの?」

みんな君から聞いたんだ。
未来の君からね。

「未来のワタシ?」

そうだよ。

「ワタシはハゲなんか趣味じゃない」

ボクはハゲじゃない! 21世紀のケ、

「で、薄毛さん、ワタシは未来であなたにそんなことまで話す
 そんな間柄になるの? マッチョじゃなくてハゲ専になるわけ?」

一部訂正があるが、そういうことさ。

「到底信じられない」

ボクは君の理想。そして君はボクの理想。
お互いがひとつになって完成される未完成なもの

「OK。じゃあ100歩譲って、
 だったら今すぐにワタシを連れて逃げてよ」

それはできないんだ。

「なんで、お互いの理想なんでしょう。
 だったらいいじゃない。
 腰が引けたな。いいかげんな男ね」

まだ、時機がきていないよ。
君はボクをまだ求めていない。
ボクもまだ愛を知らない。
君がボクを求める頃、ボクも愛を確信している。
そのときふたりはめぐり逢うのさ。
いや、君によって愛を知る。のかな

「それはいつ?」

それをいっても意味ないよ。
この記憶はボクが消えた時点でなくなってしまう。
君は忘れてしまうんだ。

「だったら消えないでずっと傍にいてよ」

そうしたいけれどそうもいかないんだ。
もうそろそろ時間だよ。あと22秒

「待って、ねえ運命って決まっているの?」

運命は決まってなんかいない。

「でも、未来であなたと出逢うんでしょう」

それは宿命さ
ボクの魂が、君の魂が
そういうものを求めている、宿命。
お互いの魂がそれを知りそれを強く求め合ったときに
その宿命の因果装置が作動する。
ふたりは必然と引き寄せられる。

「それまでの時間は意味ないじゃない」

無意味なことなんてないよ。
すべては二人が出逢うためのプロセスだ。

「あなたを見失わないかしら?」

大丈夫。

「心もとないわ」

ボクもそう思ってね。
君の記憶をたどってここまでやってきた。
なんとか君の記憶に、いや深層意識のなかに
ボクのことを刻んでおけないかと思って
そうそう最初にボクが気がつかないで
通り過ぎたときは勇気を出して声をかけるんだよ。
「馬ちゃん」って。

じゃあ未来で逢おうね。


「あっ、ちゃっと待って!」




ざああああ(周囲の喧騒)


ひとり取り残された彼女はつぶやいた


「薄ハゲ・・・」

クリームソーダの泡が
はじけて、

・・・ボクは・・ハゲじゃ・・・プッツ

消えた。