マグロ女と芋侍(6)
浅田次郎は百人いれば百通りの愛があるといった。
それはその百人が愛を知り愛を信じていればの話だ。
けれども出版社の校閲がその条件をカットしたんだ。
そんな難しいことを出版業界は許さない。
売れない本がよけいに売れなくなるもんね。
もっと手近でお手軽じゃなければ誰も納得しないのさ。
愛を知らない男と愛を知らない女が抱き合っている。
愛を知らない男が愛を知らない女にこう言った。
「俺のこと愛しているかい」
愛を知らない女は愛を知らない男にこう言った。
「愛してる」
そしてイッた。
ふたりの間に愛はあるのか?
その愛の正体はなにか?
愛を信じない男と愛を信じない女が抱き合っている。
愛を信じない男が愛を信じない女にこう言った。
「俺のこと愛しているかい」
愛を信じない女は愛を信じない男にこう言った。
「愛してる」
そしてイッた。
ふたりの間に愛はあるのか?
その愛の正体はなにか?
ははははは、よく見破ったな馬太郎君。
「お、お前は誰だ!」
あるときは片目の運転手
またあるときは温めの燗がいい八代亜紀
そしてあるときは粗めのカプチーノ
パスタはアルデンテじゃなくて給食みたいに柔らかくしてね。
「めんどくさい奴だな、誰なんだ!」
その正体は!
「その正体は!」
愛人二十人いたらいいな面相!
「でたな松原団地の人妻の敵」
ふん、後家殺しの君にいわれる筋合いはない。
「なにを、これでも喰らえ」
なんだこれは?
「仏教学院のスクーリングの通知だ」
ああああああんん・・・ぷつ
煩悩退散