あかんたれブルース

継続はチカラかな

人体実験失敗



映画が好きで、わたしはだいたいが
耳学問の他は映画で多くを学んだものです。

中学二年からでしたから かれこれ39年ぐらいかな。
上京してからは日本映画にどっぷりでした。

でね、今年の8月終戦記念日頃に『人間の条件』をやってた。
第六部まである大長編戦争映画で舞台は終戦間際の満州だ。
昨年第三部を観て、今年四、五、六部を観ました。

満州・・・

記事にしようと思って
細かいところをネットでチェックしてたら、
映画レビューのブログがあったので
覗いてみたわけだ。

まあ、読んでみて、なんというかあ
これじゃあなあ、変なツッコミいれられちゃいそう
と思って読み終えたら、過去記事だから
コメントがびっしりあるわけだ。

案の定、揉めてる。最終的には喧嘩になっちゃって(汗)
非国民とか、極左とか、極右とか(汗)
しかし、なんか揉めてる論点が違うんじゃないか?

映画の舞台が近現代史、太平洋戦争となるから
話がややこしくなるのか?
ま、それもあるでしょうが、どっか双方ズレてるんだなあ。

五味川純平はそんなつもりでこの原作書いていなし
小林正樹は監督していと思うのだが・・・

知識以前になんか映画を気負って観てる感じ。

でね、双方が共通して絶賛するのは
名優仲代達矢の熱演。

確かに仲代達矢は熱演してるけれどそんな上手いかなあ?
なんか判で押したようにいうけどさ、
この梶って主人公は相当な道化役だと思う。
ま、そういう難しい役柄を好演したことは認めるけれど、
梶に感情移入できないのだ。

他にも共演者の女優なんかを絶賛してたけど、
作品の厚味が重くてそれぞれの持ち味を発揮できなかった
ように思います。

岸田今日子だったら
同じ五味川作品の『戦争と人間』が断然でした。
乳も乳豆も露出して、だけじゃなくて
ゾクッときたよ。変な意味じゃなくて純粋に!

正直にいえば、この映画
長くてダラダラした緩い作品というのが
わたしの感想です。
六部なくても半分ぐらいでよかったんじゃないかな。
戦闘シーンはヌルイです。

純粋に映画作品として、この作品が日本映画のどこまで
評価されるものかは疑問だ。けれど、
戦争を描いた作品としては、価値あると思う。

ところが、映画そっちのけで自称近現代史物知りさんが
つかみ合いの取っ組み合いバトルを展開させる。
その内容は・・・頭痛い。

五味川純平小林正樹も頭抱えると思うよ。

なんかさ、最初から思い込みが激しすぎる。
もっと自然体で素直に観れないものかと。
そのなかで、この映画のなかの矛盾点とか
いろいろ掘りおこせば、またそれはそれで面白いのですが
どうもそういうお友達じゃなさそうなので
そうそうに退席しました。

この映画は戦争という環境で
人間の尊厳をどこまで守れるかという
ある種、挑発的なテーゼであり
まるで実験のようで、観客はそれを傍聴する。
そのモルモットが仲代達矢であり、
観客のすこし遅すぎる期待に応えて最後の最後で
金子信雄をなぶり殺してウンコの泉に沈める。
こんな惨いシーンはやくざ映画にもない。
そして、仲代達矢は「哀れな」中国人から饅頭を奪い
それをお守りに食わずに死ぬのだ。

主人公が徴兵されてから確か二年ちょっとの話だったかな?
これにも愕然とさせられたよ。

この作品をリアルタイムで観た人たちは
どんな思いで劇場を後にしたんだろう?


実験は失敗だ。

それを決定してたのが半世紀後のブログで展開される
この作品をめぐる論争バトルだと。


(本日の名言)

「軍隊で正義とか良心とか振りかざしてみろ。
 命が幾つあっても足りん」
同年(1959年)公開の岡本喜八監督『独立愚連隊』より