あかんたれブルース

継続はチカラかな

男の中の男と女

大人の恋愛講座(1)


「彼は古い樫の木のような人、
 あるいは夏の風のような人。
 いずれにしろ男が男だった時代の人だった」

1930年代から60年代にかけて
ハリウッドで男のなかの男と誰もが認めたのが
スペンサー・トレイシーだった。

アメリカで理想の男性といえばスペンサーよ。
 私は意地悪いことを言ったり、彼をじらしたり、
 一杯食わせてみたり、女そのものを演じていたわ。
 でも、彼がホンキで怒ればすぐ降参。
 男と女のロマンチックで理想的な関係というのは
 こういうものなのよ」

スペンサーについて語るのは
女優キャサリン・ヘップバーン

裕福な家庭に生まれ高学歴でプライドの高い
彼女が始めてスペンサーと出逢ったのは
『女性No.1』(1941年)の撮影現場だった。

「私、ちょっと背が高すぎるわね」

恐いもの知らずのキャサリンのこの言葉に
スペンサーは静かにこう言った。

「心配するな、じきに僕に合うように小さくしてやるよ」

キャサリンは恋に堕ちた。

スペンサー・トレーシーほど頼りがいのある
男らしい男はいない。
たとえ相手が映画会社の重役であろうが
プロデューサーであろうが、彼は怯まない。
そして、名優だった。
アカデミー賞受賞はノミネートを含めて
9回という記録を残している。

キャサリンとスペンサーは
パートナーとして9本の作品に共演した。
そして、私生活でもパートナーだった。

二人は不倫関係にある。

スペンサーが敬虔なカトリックであったこと
妻ルイーズが障害のある息子を
育ててくれていることに負い目を感じて
離婚してキャサリンと結婚することが
できなかった。

ハリウッドで最も強い男・・・

やがてスペンサーは老いていく
酒に依存して体を壊した。
病に倒れたスペンサーを献身的に
キャサリンは看病した。

その死を看取ったのも彼女だった。

スペンサー・トレーシーの葬儀に
キャリンは出席しなかった。

「ルイーズに悪いわ・・・」


この二人の名優と名女優の恋を
不倫といえるのだろうか


キャサリン・ヘップバーン
(1907年5月12日 - 2003年6月29日)
アカデミー賞受賞4回
ノミネート12回