あかんたれブルース

継続はチカラかな

信じることについて



昨日の居残り佐平次の続き
如才ないパワフルな佐平次ですが
人のよい道楽者の若旦那に
「人を信じちゃいけませんよ」という。

佐平次は人を信じていないんだ。

確かに世間師でその根底には
世間の酸いも甘いも知り抜いている。
いや、人間の本質ってものを熟知してるこの男。

裏表を使い分けてる
といえばそれまでですが、そんな単純なものじゃない。

ときどきゾッとするシビアな目はするけれど
かといって冷酷さは微塵もない。
必ず「抜け目」を作っておくし
結局その若旦那も佐平次に助けられるわけだ。


人を信じてはいけないかのか・・・

こういうことを記すと
誤解を招きそうなのでずーっと黙ってましたが
実は、わたしも人を信じていません。

「いつも信じろと言ってるくせに!」
「やっぱりそういう人だったのね」
「可哀想な人」(←上から目線の天使)

いや、まあ聞いてくれ

基本的に人間ってものは弱いものだ。
弱いってことは転ぶってこと
転ぶには挫折や自爆や
しくじりの意味があるけれど
もっと踏み込めば「裏切る」ということだ。

裏切りには、する方とされる方で
解釈や言い分も様々ですが
ピカレスクロマンのキャッチフレーズを
「愛、友情、裏切り」と謳うように
裏切りは人生の三大テーマのひとつ。
いや、人生そのものがピカレスクなんでしょう。

人間は弱い生き物という真理を立証すれば
裏切ったものは必ず
「あのときはしょうがなかった」と弁明する。
これは弱さを言い訳にすることであり
もっとシビアにいえば保身である。

ま、弁明する人はまだマシで
たいがいはそれさえ認めない。
相手のせいにするものです。自分は悪くないと。

これが人間の正体だ。

そう割り切ってしまえば、そこまでなのですが
だからってどうする?
懐疑ばかりして人の顔みたらドロボウみたいに
ペシミストを通すっていうのも漫画みたいだよ。
かといって表と裏を上手に使い分け
られるものじゃない。

大事なのは裏切らせないようにすることだ。
それには、期待しないことです。
期待するから、その期待が裏切られるわけだ。
そういった期待を相手に求めることは
ある意味で追い込みをかけてることでもあり
それを相手が感じたらきっと負担に思うでしょうね。
そういうものから逃れようというのが
人間の弱さの性質みたいなものだと思う。

こう書くと、期待しない信じないって
いうのは相手のことを思うこと以上に
自分が傷つかないための保身と受け止められる
かもしれませんが、そう思ってくれてもいい。

出合って、いい時期はいい。
でもしばらくすると必ず裏切る。
時間差やケースバイケースの個人差はあったとしても
たいがいそういうことになる。
そういうときに裏切られた、なんて思わない。
また、これか。しょうがないねえ(汗)
と苦笑い。淋しくはあるけれど
ま、仕方ない。

若い頃からずーっとこうでした。
どこかでそういうのは不味いのかなあと
考えることもあったのですが
川島雄三が佐平次を通して言ってくれたので
それを手掛かりに背中を押されて記してみようと
思ったわけだ。

なんというか篩いにかけてるようで
その確認作業みたいなもので
それもだいたい結果はみえている。
なんか不毛な作業のようにも感じるものです。
よく人間不信とかハスに構えてる人たちは
こういうところから生まれるんだろうと思う。

違うんだな。

基本、信じない。期待しない。
これはこれでもかまわない。と思う。
問題は、そこから先だ。

たとえ、そうであっても
「信じたい」という気持ちが大事なんだと思う。
ほんの一握りでもいい。
信じたいという姿勢が救われる。
そういうのがなければ、やっていけないよ。
それが世の中であり人生だと思う。
そういうなかに奇跡は起きる。

なぜなら
裏切らないものがある。
たとえその時の一瞬でもかまわない。
裏切らないものがある。
当然、自分自身もそうなきゃいけないし
そうあるように努めるし
無闇やたらに期待したりはしないように
相手を追い込まないようにする
たとえ相手が自滅していく自爆する
ことは多くても
そうじゃないものがいる
そういうときは嬉しいものですよ。

信じる。信じない。ということは
そういうことだと思う。
そこを外すと、つらいと思うな。
そのために
傷つくなんてそう大したことじゃない。

信じることっていうのは、そういうことで
それを「愚かなこと」という人もあるでしょうが
そういう声に耳を傾けてはいけない。

中島みゆきの歌にこういうフレーズがある。

 時よ 最後に残してくれるなら
 寂しさの分だけ 愚かさをください


このほんの一握りの「愚かさ」が必要なのだ。



時は 全てを連れてゆくものらしい
なのに どうして 寂しさを置き忘れてゆくの
いくつになれば 人懐かしさを
うまく捨てられるようになるの
難しいこと望んじゃいない
有り得ないこと望んじゃいない
時よ 最後に残してくれるなら
寂しさの分だけ 愚かさをください

・・・・・・・・・・・・・(「二隻の舟」より)