あかんたれブルース

継続はチカラかな

乙女の儚夢


わたしがネカマだった頃
おセイさんは常連客だった。
しろこもりんちゃんもルイちゃんも通ってくれてたから
別にヒミツでもないの。
店の名は「あんぽんたん学園」といって
ヤフー通りの二丁目のはずれにあったわ。
ただ、おセイさんはずっとわたしが女だと信じてたから
「今度東京に行くから会ってください」には
困ったものよ。
わたしが女装して飯田橋のホテルエドモンドに
行った話は正直に記事にしました。
そういうわけで、彼女が
美しい日本語を求めているから
トリックスターさんの書棚から『春の調べ』を
参考に、綴ります。


 西日差す南向きの窓で
 お便りしたためるわたしの喜びお察しくださいまし
 やっと昨日頭から吊るされた包帯が解かれましたの
 さっきお医者さまに内緒で
 そっと白い包帯ほどいてみましたの
 ぷんと臭う湿布の香り
 だけどおセイ様
 もう毛が生えそうよ
 なんだかとてもラブのような気持ちでしたわ
 そうそう
 ずっと小さい頃から左側の尻にぽっとあった蒙古班
 いつか知らない間になくなってしまいました
 この頃なぜかそれがさみしいのです
 いつも鏡に問うとて
 大事なものを落したようでなりませんの
 鶴や亀のいる楽園のうねうねとした道に
 はやく帰ってみたいわ
 おセイ様




 かしこ