あかんたれブルース

継続はチカラかな

太巻と神彰とあまちゃん度



「ふるさとを今宵は誰と味わうか。
 ほっけまるごと一匹にだんしゃく芋
 それに地酒二合で1120円」

同年代世代だったら懐かしい
北の家族」のCMコピーです。

あの頃の深夜CMは♪ロンドンロンドンか
♪まーるい緑の山手線かこれだった。

北の家族」は居酒屋チェーンのはしりで
いまでも新宿にあるんじゃないかなあ?
あの大きな看板。

この(アート・ライフ)経営者・神彰って人は
それ以前「赤い呼び屋」とか「怪物」といわれた
プロモーターだった。
ボリショイ・バレエレニングラード交響楽団
ボリショイ・サーカス、インディ500マイルレース
など数々のイベントを手がけて一世を風靡した男。

しかし1964年、一億千八〇〇万の借金を抱えて倒産。
それが原因だったのか
二年前に結婚した作家有吉佐和子とも離婚。
まさに天国から地獄を味わった・・・

と端からみたらそう思うのでしょうが
神さんはなんか飄々とした人で
新しい奥さんをもらって東洋哲学など研究していた。
それに五十人ぐらいの人が集ってきたそうです。

そこで奥さんの発案から
みんなで集まれる場作りと新宿で店をはじめた。
これが「北の家族」のはじまり。

この奥さん(義子夫人・72年に死去)は
農林水産大臣・平野力三の次女だそうですが
東洋思想(老子易経)に詳しかったそうで
神さんはその影響を強く受けたようです。
それもあっての復活なんでしょう。
人間は一度落ち込むとなかなか這い上がれない。

「金儲けしようとして企画したものは限界がある」

神彰は淡々とそういう。
「何か心から感動する楽しいものを一緒に」
という発想から成功したといい。
北の家族も居心地の良い場所を確保するとこから
始まったと振り返る。
「多くの失敗から得た教訓ですよ。
 事業は自分の心を披瀝して人の心を得るという
 原点から始まる。
 その累積で評価される。
 最初から金儲けではないのですね」

時代だよ。と
醒めた言葉で打ち消す人も多いでしょう。
確かに神彰の興行師としての成功や
居酒屋ブームには時代性があったことは確かだ。
しかし、彼の考え方の基本は普遍ではないだろうか。
それを運だけの話で済ませてしまうのは
もたいないと思う。

先人の智慧ですよ、智慧
智慧とは真理のことね。

さて、話は一転
NHKの連ドラ『あまちゃん』に夢中
という人も多いことでしょう。
恥ずかしながらわたしも「はい!」その一人。
ここにきて、太巻(古田新太)の真意に
思いを馳せております(笑)
脚本家宮藤官九郎ワールドに翻弄されているわけだ。
はたして太巻は・・・
(1)過去の汚点を隠蔽するためにアキちゃんを潰すか
(2)ではなく償いとして敢てアキちゃんを厳しく
  仕込んでプロデュースしようと考えているか
(3)どっちでもなく(現実的に)シビアに
  ビジネスライクに割り切ってる

アキちゃん(能年玲奈)の素性を知ったときの
動揺から(3)はまずない。ドラマだし、そんな
中途半端は許されない。でしょ

クドカンのカモフラージュからなかなか実体が
つかめない太巻ですが、どういう顛末であても
辻褄のあわない筋立てでは話にならない。
そういう意味で過去の回想場面に
伏線としてヒントはちりばめられているわけだ。

太巻はアクが強くシビアな男だが
誠実な人間か否か。いい加減な人間か。

宮藤官九郎のこれまでの手口から
おのずと答えは(2)しかない。きっぱり
に異論がある人のなかには
これは作り話で現実は違うよと考える人もいるよね。
たかだかドラマの絵空事で終わらせるのは
もったいないので、荒巻太一を実在の人物として
現実的な観点で捉えてみる。
(1)と(2)では度量の差がある。
(3)みたいな中途半端ではとてもとても
やっていけません。現実的ではない。
(3)じゃあそこまでのしあがれないのだ。
(1)か(2)か

神彰の「何か心から感動する楽しいもの」
つまりそういう原動力がないと
やっていけない。じゃないと途中で放り投げてしまう。
そういうものなんですよね。
そういう筋立てはフィクションでもリアルでも
一緒です。そんな甘ちゃんじゃ無理。
(度量容積・糖度 2>1>3)
宮藤官九郎はそれを知っている。
これがリアリティーというものだ。