あかんたれブルース

継続はチカラかな

潰れないお父ちゃんの金のタマ2つ

屠られる羊たち(8)


ふと、さ・・半沢直樹の倍返しに
なんで危惧を憶えるのか、考えてみたら
ああ、なんだそうかと答えはすぐに出てしまった。
要は、あれは広能昌三なんだと。

広能昌三とは『仁義なき戦い』の主人公で
とんでもない親分の
山守義雄(モデル・山村辰雄 演・金子信雄
打本昇(モデル・打越信夫 演・加藤武
に対して「まだ弾はのこっちょるがよ」と
日本映画史上類をみない名言の啖呵を吐き
観客の拍手喝采を浴びた作品です。
演じたの菅原文太(モデル・美能幸三)!

食わず嫌いの人でまだ観たことのない人
半沢直樹が肌に合ったらなら
この仁義シリーズ全五作是非お勧めです。

こういった組織群像劇の葛藤の面白さは
なにも半沢直樹が初めてではなく定番ジャンルで
企業小説であれば城山三郎から高杉良
歴史小説なら司馬遼太郎の『坂の上の雲』の
乃木希典の旅順攻略
『関が原』『城塞』などなど
結構古くからあるジャンルです。

まあなんにせよ、それまで健さんの我慢劇に
ヤキモキしてた我ら三丁目のボンクラ世代は
憑き物が憑いたように広能の霊がのりうつって
広島県人でもないのに広島弁
「まだ有給休暇はのこっちょるがよ」と
訳のわからんことを上司に言っては挑戦して
世間を狭くしてきたものです(汗)。
その苦さが半沢直樹の倍返しにあるんだよね。

「だったら泣き寝入りしろっていうの!」

そんなに恨みを晴らしたいのか・・ふひょひょひょひょっ
だったら絶対に面と向かって
倍返しなんて啖呵を吐かないこと。
リアル世界では一発でアウトです。
丑の刻参りのように極秘で呪うんだね。
それと時間軸を長く持つ。数年十数年。
伍子胥のように

現代人は性急です。即効性を求める。
半沢直樹はドラマだから60分以内に結果が出ますが
現実世界は子供の喧嘩じゃありませんから。
ただし、伍子胥の末路のように
人を呪わば穴ふたつは覚悟しておかないと
いけないかもよ

そんなことしたくない人はその場から離れることだ。
范蠡のように
そこは磁場(環境)がよくない。上司がよくない。
と見極める、引き際が肝心。

(たとえフィクションですが)半沢直樹
亡き父の怨念を背負ってそれをバックボーンにする
限りはやはりその末路は悲劇になってしまう。
原作は知りませんけどね。
危険な作品だ。

個人の恨みを個人で晴らそうとしなくとも
そういう組織だったらほおっておいても
ダメになるんじゃないかと思うのってオカルトか?


わたしはここで
まったく別なことを考えてしまうのです。
なんで半沢たちは組織や会社にこだわるのだろうか?
それは『七つの会議』でも感じたことですが、
大和田常務などが生息する会社だったら
「あ~あっ、やれんのう」と
とっととやめちゃえばいいのに。
そうすればちゃんとした人材が集まらなくなるので
ブラック企業も成り立たなくなるんじゃないのかな。
結局、需要と供給の関係なわけだ。
「そうはいっても・・・」
また、それかよ。だったら大人しくしておくことです。
間違っても半沢直樹の真似なんかしないこと。

こういった組織至上論にも
儒教朱子学が影響している。
これは孔子から派生した新儒教
モンゴルに攻められ領土が縮小していった南宋時代
主従の関係を精神的なつながりとして構築あせたもの。
日本の葉隠なんかも影響されてる。
つまり武士道はここからなんだな。
忠義、滅私奉公とか、お家大事とか

半沢直樹は組織内だけで解決させようとする。
『七つの会議』は内部告発という
企業にとってもっとも忌み嫌う禁じ手を用いた。
それでも会社に対する愛情は残して

わたしはふと、国税局の黒崎にこういう台詞を
突きつけてみたい衝動に駆られます。
「潰せるものなら潰してみろ」

メガバンクは潰せないのだ。
これこそが大問題で、もっとも恐い現実。
ま、そんなことは関係ないか
スッカッとしただけなんだよね。

仁義なき戦い第四作『頂上作戦』のラストで
広能昌三が漏らした台詞

「間尺の合わん仕事をしてしもうたのう」

非常にわびしい
ラストシーンだった。