あかんたれブルース

継続はチカラかな

灯をかざす人たち

エポニーヌを探して(2)


小島直樹の作品に『一燈を提げた男たち』
というのがあります。
この男たちシリーズは気骨ある男たちを
小島流の人物評伝で綴った味わいのあるエッセイ集
シリーズとして「回り道をした」とか
「逆境を愛する」とか「出世を急がぬ」
とか新潮文庫で出ていますので
機会があったら読んでみてください。


先日のニュースの特集で
東日本大震災の被災地便りとして
ペットのボランティアを紹介していました。

そういえば震災直後にアゴラ池田が
人命救助の必死なときにペットボランティアとは
「何事ぞ!」と息巻いていたなあ
アホな経済学者だ。経済学者なの?
この人はタマにはいいことをいうのに
コミュニケーション能力がないので
結局、炎上マーケティングに頼らずおえない。
これは評論家として致命的な欠点だ。
古市憲寿とともに東大話法という括りでいずれ
記事にしてみたいと思います。

さて、そんなボランティアのなかで
仮設住宅で飼えなくなったペットたちの
一時預かり所でペットたちを散歩させる
ボランティアを紹介していた。
その日は雨の日で、その雨の中を散歩させる
ボランティアのおっちゃん。
へええ・・・こんなボランティアもあるんだなあ
と感心して観ていました。

でもね、人手が足りなくて
朝夕二回の散歩は大変みたいです。
預かり所のゲージのなかの犬達すべてを
散歩させるのに夜中になってしまうこともあるとか

なんかちょっと間抜けな話ではあるのだけれど
あのおっちゃんが眩しくみえたよ。

また、そんな預かり所では
仮設住宅で飼えなくなったペットの里親をさがす
活動もしていました。

その解説のとき、
映像では大型の正犬が見学者に噛み付いていた。

「この子は気が弱くてねえ」

この見学者は何度も通ってる方だったようです。
「たぶんこの子は他に引き取り手がないだろう」
そう思って、何度も通って
そしてその日、この犬を引き取っていかれた。

わたしは・・・感動したというか
頭が下がる思いだった。
こんなこと自分は考えもしないもの。

そういえば・・・以前
広島のドッグパークが破綻して
経営者が夜逃げして
置き去りにされた犬達が悲惨な状況になっている
ニュースが報道されたことがあった。

それに心を痛めた人たちが里親を申し出てくれて
引き取っていくのですが
(無論、すべての犬達が引き取られるわけじゃない)

そのなかである女性が引き取った犬は
片方の眼球が飛び出たとても痛ましい犬だった。

「この子はきっと
 誰も引き取り手がないだろうから」

彼女がこの犬を選んだ理由・・・

わたしは愕然となったよ。
お手上げだった。
そんなこといままで考えたこともなかった。
もし自分だったら可愛い飼いやすい子犬を選ぶ
でしょうねえ。
なんか自分の薄っぺらさに愕然となった。

いまでも壇蜜泉ピン子だったら
有無を言わさず壇蜜を持ち帰るでしょう。
「このピン子は誰も引き取りがないから」と
酒気帯びでも、そんな選択はしないと思う。

あ~あ、俺って小さい人間なのかなあ
人間の等級からいったら下から三番目あたり
なんだろうなあとしみじみ思うのでした。

ま、それとこれとは別次元の与太噺でしょうが
それにしても、
悪意とエゴに支配されがちな人間の本性
なのですが
その表裏に存在する人間のこの優しさって
なんだろうねえ・・・

救われるよ。

だから
お願いだからそれを偽善だなんて
批判しないでほしい。



枝智香がよく行くペットショップで
ココ最近気になって仕方ない子がいます。

グレート・ピレニーズの子で
狭いゲージのなかで窮屈そうにしている
まだ三、四ヶ月なのですが
超大型犬の子ですから三、四ヶ月でも
正犬なみにデカイ(汗)。
こんな感じ
http://gensun.org/pid/347890

ついこの間までは白熊の赤ちゃんみたいで
来店するお客の人気者だったのに
いまではこの店の厄介もの扱いだ・・・

目と目が合ってしまったのです。

枝智香はこの子の訴えるような
その目を見るのがつらい、のです。
だったら行かなきゃいいのに
今日もまた来てしまった。

やっぱり売れていない・・・

いくら可愛くてもみんな知ってるんだ
このグレート・ピレニーズが成長すると
どうなるかということを

ああ今日もまた大きくなっている
不自然な体勢でゲージのなかで
そして・・・お願いワタシを見つめないで!

結局、買ってしまった(汗)。
お値段なんと17万円也。痛い出費です。
でもね、彼女の気持ちは救われた。

「ボク」と名付けました。

けれども現実はここからはじまる・・・

すくすくと成長するボクなのですが
ペットショップで狭いゲージに押し込められていた
影響がたたって股関節を痛めてしまっていたのです。
体が成長していくほどに
その体重を支えきれなくなっていく
痛がるわけだ。
散歩に連れていっても
途中で痛がってキャンキャンなきだす。

仕方なく小さな枝智香が大きなボクを
オンブして・・・散歩するハメに
変な話でしょ(笑)

やかて部屋のなかでも痛がって
キャンキャン泣くようになってしまった。
近所のことがあって
飼う事に限界を感じていきます。
というよりも
もうボクを背負えない。

いろいろ考えたあげく
もっとひろい環境で育てられる里親を探しました。

無責任な飼い主?

そういう批判を与えることは簡単だけどね。
なによりも枝智香がそれで悩んだわけです。
枝智香はそのときのことを思うと
情にほだされてペットを飼うものじゃない
と痛感したそうです。

多くは語らなかったけれど
彼女にとって
ボクとの別れはつらいものだったと思う。

うまく引き取ってくれる方が現れたそうです。
さようならボク
あたらしい環境でしあわせになってね。

ほろ苦い話でした。

結果としては、そういう結果になったけれど
わたしは、夕暮れどきにあの坂道を
小さな枝智香が大きなボクを背負っていく
そういう光景を思い浮かべると
微笑ましくてね。

世間の人は間抜けな話と笑うのでしょうが
わたしはそういう枝智香が好きなのだ。

救われるのです。