あかんたれブルース

継続はチカラかな

やくざはつらいよ



昨日はBSから
『やくざ戦争 日本の首領』
男はつらいよ 寅次郎の縁談』
と邦画三昧でした。

日本の首領はシリーズ第一弾
そのまえ日本の仁義なってありましたが
制作者側はこれを華麗なる一族ゴッドファーザー
みたいなものにしたかったようですね。
東映十八番のオールスター企画だ。
山口組をモデルにしてるのは三代目の息子満氏が
プロデューサーに入っているから(企画?)

主演は外から佐分利信招聘
東映からは鶴田浩二を地道行雄モデルの頭で臨んだが
鶴田のどうにもこうにもの残侠ぶりが痛い。
企画倒れで脚本家と演出家がついてこれてない。
実録路線の残務整理みたいなものとなりました。
実録モノに鶴田浩二はあわない。53点
それでも映画はヒットしてか三部作となって
→黒幕→制覇と流れて御臨終。
任侠論と組織論は水と油なのだ。

一方寅さんの今回のマドンナは
松坂慶子の再登板、だけどまったく別人役。
しかしなあ失恋というけれど
今回の寅さんはふられたの?
毎度観客をヤキモキさせるねえ。
まあリリーがいることだし仕方ないか
寅さんもどこか力の入り方が違ってたよ。

それにしても満男の豹変はなんだ!
なんであの気立ての良いナースを捨てるか意気地なし
まあ後に後藤久美子が控えていたらしょうがないか
それとも遺伝子のイタズラなのかしらん

惚れやすいくせにイザとなったら逃げ出す。
寅さんの悪い癖だね。
コンプレックス、ハンデを背負ってる。
それが「やくざな男」ってやつでしょうか。
座頭市にもそういうのがある。+障害者。
つまり松竹や大映にはあって
東映にはない姿勢です。

なんでリリーは例外なりえたか?
堅気じゃなかったから。
座頭市リメイク版で樋口可南子を抱けるのも
堅気じゃなかったから
そんなことを考えさせられましたけど
哀しきこのシリーズの宿命とでもいうべきかの
今回もさわやかな不完全燃焼で70点かな。


世間には、
職業差別ってものが歴然とあるものです。
上から下は当然として下から上だってある。
ピンキリの階層閉鎖的社会環境に支配されてる。
そういうのって半分以上は自分達で構築してる。
差別を忌み嫌うくせに自分達から差別して
己を保たないといけない。
ここに日本的な共同体依存の世界があります。
不自由なもんだと思う。

酷な話ですが、そういうなかでの寅さんの恋心は
タブーというか禁断の恋なんでしょうねえ。
相手はいつも堅気の女性、高嶺の花なのだ。
その一線を越えるには相当な覚悟がいるわけだ。
寅さんにはそこまでの勇気がない。
それを誰も責められはしませんけどね。
文太や松方弘樹だったらなんてことないんでしょうが。

そんなダメな寅さんをヒロインたちは
この作品では松坂慶子が、
そんな寅さんの良さを語っておりましたが・・・
それをあの満男のバカが!

渥美清の盟友腹心の友に関敬六テキヤ仲間として
準レギュラーで出演しています。
同じ稼業の仲間内として。
そのなかで「あのカミサンは達者かい」と
寅さんが問うと
「新しいのと取っ替えたよ」という答え
それに激怒した寅さんが
「お前の面なんかみたくもねえ」と吐き捨てる。

寅さんにとってその、やくざの共同体も
決して身を寄せる場ではないんだな。
寅さんは孤高であり自主独立の人間なのだ。
組織や共同体に寄り添わない。
同じやくざでも日本の首領のやくざとは違う。
そのくせやくざというハンデだけは背負ってる。
不器用で損な生き方なんだと思うけれど
そこが寅さんのいいところであり
魅力なんだと思う。

そういう不器用や損な生き方ってものは
ストイックではあるけれど美しい。
寅さんてきれいなんだよね。
お金じゃない顔じゃない
松坂慶子はそういうことをいってるんだと
いや山田洋次かな

やたら葛藤のない行動原理が横行するなかで
寅さんの歯痒さにはそういう切なさがある。
そのジレンマはなぜかいつも爽やかで
狐につままれたように納得させられてしまうのだ。

そしてわたしたちはリリーと結ばれ
添い遂げることを心から祈っているのさ
ほんと困った人だね(笑)