これじゃあ浮かばれない美人薄命
古い奴だとお思いでしょうが、
古い日本映画もなかなかいいものでございます。
ということで
『名もなく貧しく美しく』(1961年)を観る。
といっても昭和36年だからそう古いわけじゃない。
この映画、主演の高峰秀子が美しい!
聴覚障害者の話
障害をもつ男女が出合い夫婦となった話
その夫婦と子供とおばあちゃんの
家族の話
それはまさに名もなく貧しく美しいのだ。
そういう時代があったんだよね
ちょっと前の日本にはそれがあったんだ。
聾唖学校で出会った二人
はじめてのデートは終戦後間もない上野公園
動物のいない動物園でお弁当をひろげる
男は女に手話でプロポーズする。
戸惑う女。女はバツイチで結婚に自信がもてません。
お母さんとよく相談してから・・・
男はいつまでも待ってるという。
その帰りに、耳が聴こえないことから
無賃乗車に間違われて
駅員にひどい仕打ちを受ける男と女
そのことが女を決心させる。
私達は助けあわなければ生きていけません。
道雄さん私を一生助けてくれますか
私は道雄さんのためなら一所懸命助けていきます。
私達のようなものは一人では生きていけません。
お互いに助け合って・・・
この男、小林桂樹がまたすっとぼけた良い味で
なんとも「おたんこなす」で、やさしいんだな。
いやあやられちゃったよ(涙)
透析中に観てたらうるうるきちゃって
もう頬が濡れちゃて洟は出るは血圧は上がるは
「馬太郎さん大丈夫ですか?」と
看護師はうるさいはで、急遽ドクターストップ
一晩おいて、後半を観る。
もう、健気で切なくて嗚咽しちゃった。
こんなの外で観れないよ。
もう超危険な作品です(汗)
観るときは一人のときね。「R一人」
この間の『くちづけ』といい
なにかと障害というものを考えさられる
これは座頭市から始まってるのかな
また、人が人として「倖」というものを
得るには何かしらの障害があってこそ
それがあってはじめて、気づくものかと
考えさせられてしまうのだ。
さて、映画は後半に入り様々な障害が不運が
二人のまえに立ちはだかる。
障害とは、身体的なものだけじゃない。
子育てに悩むヒロイン、現実的な貧困・・・
それでも、名もなく貧しくとも美しく
この夫婦はこの家族は生きていくのだ。
空襲のとき助けた子供が成人して訪ねてきてくれて
さあエンディングまで最後の直線3ハロン・・・
おい、おいおい、なんか嫌な予感
ちょ、ちょっと待てよ、こら!
・・・
それはないだろうに・・・唖然
実話をもとに作られたそうですが
ココも実話なの?
このラストじゃなかったら95点、いや100点
やってもよかった。DVD買おうと思ったもの。
だって、高峰秀子が美しいんだもの。
でもこのラストじゃあ76点です。
たとえ実話であったとしても。
監督脚本の松山善三は何かんがえてるんだ?
ハッピーエンドが名作を格下げしたってのは聞きますが
こういう取ってつけたような悲劇で作品を台無し
にした典型かもしれない。
もったいない話です。
それでも、もうひとつの三丁目の夕日ですかね。
昭和20~30年代の東京、大塚あたりでしょうか
ささやかな小さな灯のような家族の物語。
ヒロイン秋子の母役の原泉が良いです。
「騙されたって損したってこうやって
やってこれたんじゃんないか」という
この母親の世間知に長けた慰めにはどっかーん
です。感無量だな(涙)
それとセコイ仕立て屋の主人(多々良純)の
ほんの小さなささやかな善良。
「おじさん、馬鹿っていってごめんよ」
くあああっ、日本人が優しい。
そういう時代が確かにあったんだ。
名もなく貧しく美しい時代があった。
若い世代にはうざったいかもしれませんが
三丁目世代があの頃を懐かしむのは
そういうやさしさのせいかもしれませんねえ。