あかんたれブルース

継続はチカラかな

恋の修羅場のダイハード



映画じゃないんだけど
テレビ版の『モテキ』を鑑賞しております。
お気楽に観るにはちょうどいいかあ
と思ってDVD4枚借りたのですが
これがなかなかよいのです(笑)

なんだろう、当世若者の恋愛意識というか
ブコメディーなのですが、それはそれで深い。
モラトリアムで受身で弱気で自信がなくて
なにか問題があると自己完結で逃げてしまう。
まったくヘタレの30歳の若者(?)に
突如あらわれた「モテキ」という現象
当人は舞い上がり、戸惑い、躊躇し混乱しては
失敗を繰り返して自己嫌悪に陥って挫折しながらも
本当の愛を求めていくという
試行錯誤のハードバイオレンスラブストーリーなのだ。

ドラマではコミックやJポップなど
サブカルチャー(の影響)を効果的に用いています。
それがイマドキの青春グラフィティーという感じ
に仕上がっているんでしょうねえ。

そんなわけで
この作品を「今風の」「今時の」「現代の」若者
という表現をしましたが、ところがどっこい
こういうのは昔から変わらないんじゃないのかなあ?
これってまた別の意味での横道世之介ではないかと
微笑ましく思ったりするわけです。

主人公の悲願は脱童貞。
その思いは「とにかくやりたい」の気一本。
ところが、イザとなったらビビッてしまう。
で、本当に好きな人とやりた。
なんて健気なことを宣まうわけだ。
その結果、EDになったりして
まったくしょうがないあほんだれなのですが
そういう生真面目なところ
たとえ言い訳であったとしても
なんか可愛らしくもあって、憎めない。

実際、なんでこんな情けない奴がモテルんだ?
とは思うけど、もしかしたら彼を取り巻く
四人のいいオンナたちはなんとなくその美徳(?)を
察しているのかもしれませんね。

美徳とはいっても、主人公は自分からアクションを
おこせないヘタレですから
なかなか自分の気持ちを伝えられない。
「俺のことどう思っての?」が関の山。
そして毎度、窮地に陥って下手を打つのだ。
でなけば、みょうに器用に立ち振る舞おうとして
結局また下手を打つ。
たださ、そういうのを上手にクリアして
恋の達人に成長するっていうのもねえ

ドラマでは例によってリリー・フランキー
凄腕の達人として登場しますが
あれってひとつの男子の本懐、北極星だよな。
こだわらず、割り切って生きる
これこそが「大人」の証みたいな思想が流布された
わけです。
でも、それでいいのだろうか・・・

菊池凜子がいじける主人公に鉄槌を浴びせる。
「そういやってグズグズしてるから
 いいオンナはみーんな、そういうオヤジに
 喰われてしまうん、だよ!」
まさにその通りでござる。

主人公のことをバカにしますが
わたしなんかも毎回その回ごとに
入れ替わり立ち代りするマドンナに
この娘がいいなあ、いややっぱりこのオンナがいいよ。
いやいややっぱりこっちでした(汗)
と、揺れる揺れるの図は
女性陣からしたら「最低!」なのだ(笑)

ゴーヤにハチミツかけたように甘いようで苦い
本能と理性が、純情と残酷が、あいまった
誠に辛らつな作品ですかね。
これ、コミックの原作がいいんだね。
それは主人公の心理状況だけでなく
対するマドンナたちの気持ちも表現する
これってある意味で山田洋次を超えている(笑)

傷つきたくない主人公。
でもけっこう傷ついてしまう健気な主人公。
これはこれでハードバイオレンスだと思うよ。
そして、若さっていいなあと

深夜に放映されたハチャメチャトレンディー
ブコメディーなのですが
下手な映画なんかよりも断然面白く
また中身も濃い作品かと思います。