あかんたれブルース

継続はチカラかな

日本人の移民魂に想う



日曜の午後にNHK特集の再放送をやってる。
再放送といってもふた昔以上前の古いもので
先々週は桜島の火山噴火を観測する
京都大学の先生のお話でした。
とても感銘を受けたものです。

そういうことがあって昨日も観たのだった。
終戦後の南米移民のその後を取材する内容。
その後といっても昭和50年ぐらいの番組
古い乗船名簿からその足跡をたどるというもの。
その家族どの家族にもさまざまなドラマが
あるものです。
人生は運不運それ次第というけれど
まさにそれを否定できないものだった。

同じコショウ畑でも場所の高低で
その運命はまったく違った。
洪水に旱魃、病害など厄災は数え切れない。
緊張と不安そして希望と夢
過酷な運命を切り開いた家族もあれば
押し流されていった家族もいた。
共通して、移民というものは過酷なものだと
痛感させられました。
昭和20年代
その多くは大陸からの引揚者と復員軍人だった。

よく夢なんてみるもんじゃない
という訳知りの大人がいう台詞があります。
それは恵まれた環境のなかで生きている人間の
台詞だ。
そうでない環境を余儀なくされた者たちにとって
夢こそなければ生きてはいけない。
そういうことを考えさせられる
切ないドキュメンタリーでした。
たんなるサクセス物語ではなかったんだな。

日本の移民は明治頃から盛んに行われていました。
日本じゃ食えなかったんだね。
ハワイとかアメリカ西海岸とかそして南米へ
明治三美人の林きむ子の発狂死した最初の夫も
難民事業に携わっていたはずです。
日本は貧しかったのだ。
日清日露戦争以降は大陸へも多くなった。

アメリカっていう国自体が移民の国
ネイティブといわれるアイルランド系さえも
移民なわけですからねえ
それがピラミッドで積み上げられてできてる。
その頂きにWASPがあってドイツ系とか
イタリア系とかポーランド系、ユダヤ人とか・・・
ヨーロッパも貧しかった。
日本人は下から3,4番目ぐらいだったんでしょうか。
中国系とかコリア系、ヒスパニック系などなど
そこから大陸横断鉄道の労働力が生まれ
ゴッドファーザーのギャングが生まれ
スタインベックの『怒りの葡萄』が生まれ
ドボルザークの『新世界より』が生まれた。
奴隷として売られてきた黒人もまた移民ですかね。
ジャズも生まれた。

いま、中東シリアの難民問題が世界的な
社会問題となっています。
日本は地理的に遠いので対岸の火事
まあ、南シナ海でさえも遠い話と嘯く輩もいるけどね。
在日朝鮮人だって朝鮮騒乱の難民だ。
強制連行なんて嘘っぱちもいいところ。

シリア難民に対してドイツは寛容とのことです。
さきの大戦での贖罪からとのことですが
国内ではその反発も強い。
それ以前からの移民問題が深く影を落す。
皮肉なことですがそれはキリスト教から異教徒と
長く迫害されてきたユダヤ人をハプスブルグ家が
国をあげて受け入れたことから端を発している。
政情不安だけじゃなく貧困も拍車をかける。
なにも好き好んで祖国を捨てたりしない。
移民と難民・・・
難しい問題です。

大陸に渡った日本の移民たちは
そのほととんどが追い出されてしまいました。
環境的に決して歓迎されたわけではない
南米ではその後も二世三世と根を生やしている。
逞しさと同時にそこに日本人の良質を思う
わたしは民族主義者なのか?

反発し排除し対立衝突するだけではなく
融合し共存する能力だって人間にはあることを
教えられます。

とは別に、祖国を捨てたはずの日本人が
祖国の日本人よりも日本人らしかったりする。
変容する日本人とは別に
まるでタイムカプセルのなかで懸命に生きてるような
日本人がそこにいました。

あの番組の、確か昭和28年だったかな?
あのときの移民一世の人たちが生きていたら
いまの日本人をみてどう思われるのでしょうか。
そういえばフィリピン・ルバング島から
28年ぶりに帰還した小野田さんは
そうそうに愛想尽かしてブラジルへ渡ったんだよね。
憂い嘆く老兵を当時のマスコミは
「軍人精神の権化」「軍国主義の亡霊」と批判した。

人間は運不運のなかで生きる定めにあります。
マッキャベリ曰くその時代の変化に適応できるか否か
これが重大なコツなのも理解できる。
けれども、同時に不変であることが大事だとも
易経では説いています。
衝突や対立、排斥だけではなく
融合や共存というものが理解できていた
日本人は確かにいたわけであり
それは現在の稚拙でひ弱な私たちよりも
逞しいものであったと思う。
でした(汗)