あかんたれブルース

継続はチカラかな

裏切りの免罪符


アメリカ人の祖国愛に対して
ヒトラーの偽札』は祖国のないユダヤ人のお話

第二次世界大戦中に強制収容所
ユダヤ人の職人にポンド、ドルの偽札を造らせ
連合軍側の経済を混乱させようという
ナチスドイツの作戦だ。

主人公は名うての贋作犯罪者ときている。
当然そういう祖国愛など持ち合わせていない。
ただどうやって生き残るか
というリアリストなのだが・・・

ユダヤ人収容所の環境は最悪です。
ドイツ兵は憎悪と軽蔑を露骨に
ユダヤ人の豚野郎」と人間扱いなどしない。
効率よく処分抹殺することを任務としている。
ほぼ同じ人種なのにここまで差別化できるものかと
考えさせられてしまう。
ユダヤ人差別は人種差別ではないのだ。
嫉妬から始まったこの差別には根底に異教徒という
伝統的民族差別があるわけです。
音頭取りは教会からときたもんだ。

『夜と霧』でも思うのですが
このような追い込まれた環境で
なぜここまでユダヤ人は生に執着するのか
それは『ソフィーの選択』でも同じだった。
おっとソフィーはカトリック教徒じゃなかったか?
まあいいや。
このあたりは日本人とは少し異なるかもね。

そんなユダヤ人が「裏切り」だけは許さない。
そしてそこから民族的いや人間としてのプライドが
クライマックスに向けて駆け上がる。
ヒューマニズムというほど生易しくない
アイデンティティーっていうやつだ。
でもナショナリズムではない。

祖国を持ち得ぬユダヤ人にとっての
アイデンティティ
日本人はこれを戦後蔑ろにしてきた。
かといってさほどヒューマンを尊重したわけじゃない。
浪花節は遠の昔にわらわれ絶滅しました。

そこに現代の日本人の
脆さ弱さがあるんじゃないだろうか。
優しいけれど脆弱で、裏切る。
それを弱さのせいにして憚らない。
でなければ死で決しようとする。