あかんたれブルース

継続はチカラかな

広瀬は死んだ。

生死観と性愛観(23)


昨日のドラマ『坂の上の雲』第二部完結編で
広瀬武夫が死にました。

制作者は軍神となった広瀬をこの第二部では
大きくクローズアップしていた、

どこぞの市民団体とか有識者
戦争を美化するとして危険視し非難のネタにするのでしょうが、
一連の広瀬の人間像を観て、本当にそう映るのかと考えてしまいます。

陸軍ではこの後の遼陽会戦首山堡で戦死する橘周太が軍神となります。
それに対抗して海軍は広瀬を軍神に祭りあげたという穿った見方もありますが、
たとえそうであったとしても
この広瀬と橘は立派に軍人であり、人間だったことには間違いない。
わたしはそう思う。

先週金曜日に『「家族のため」という台詞』という記事で
我が愛するJJ. を悩ませてしまったようです。
しかし、彼は彼なりに悩んで「役割と変化」という答えを導き出しました。
それでよいと思います。

わたしがこの記事を書いた動機は
前回のドラマ『坂の上の雲』で秋山好古(兄)が弟(真之)に
日露戦争に臨み、一家全滅(この兄弟のこと)しても日本を守る。
というニュアンスの書き付けを贈ったシーンからでした。

場面は千葉習志野の秋山家勢揃いのなかで。
家長は秋山好古となり、その家族に年老いた母親。そして弟夫婦です。
この二人の兄弟が死ねば、この家族はどうなるのか?
軍人恩給があるとかそんな問題じゃなくて、
家族は悲しむだろうなあ・・・と。
原作やドラマでは描かれていませんが、あの場面にはもう一人、
秋山兄弟の長兄がいるのです。
とても優秀だったこの兄は将来を嘱望され上京していたのですが
脳を患い、それ以降、秋山家は三男の好古が継ぎ、
以後、この長兄を死ぬまで面倒をみていた。

好古が戦死すれば、弟の真之がこの家族をみるのでしょうが
二人とも戦死すれば、さてどうしたものなのか・・・

だから戦争はよくない。とする。そりゃそうです。そうなんだ。
だからといって、この秋山好古を家族を顧みない人間とできるか?

死ねばもともこもない。とよく言われます。

確かに人の生命は重い。地球と同じ重さだといった首相もいました。
けれどもどかで私達は命や人生を損得で考えていないだろうか?

ちょっと意地悪な物言いになりますが、
国家公務員として軍人である秋山兄弟は税金をはんで生活する者だ。
その軍人はいざ有事となれば、その能力を充分発揮させ、
この国から危害を取り除く、戦であれば勝つために努める。
その意味では死を辞さないという姿勢でなければいけない。
そういう役割を担う者でたちです。

わたしはそういうのに感動するけどね。
でも、そうじゃない人はたくさんいます。じゃ、お前らは
タイムマシンにでものってロシアのニコライ二世と交渉してこいよ。成功させろよ!

どう後知恵でif しても日露戦争は阻止できなかったと思います。
じゃあそのときどうするんだ。戦いが始まったとすれば、勝つしかない。
誰が戦うのか? 軍人が戦うしかない。
そういった軍人がもし仮にそこで「家族のために」とかを優先したら
最初から勝負にならない。いや、違う、彼らは
「家族のために」戦ったのではないか。

たぶん、そういうことを国家主義の洗脳だと批判するむきもあると思う。
たとえば広瀬らが決行した旅順閉塞作戦に参加応募した2000名の兵員。
これを読んで観て、鼻を鳴らす人もいると思う。
彼らにも家族はいた。
なかには勢いで応募した人もあったでしょうが、それはそれとしても
そういう誰だって死にたくはない。なかで
死んだ人は、バカで、損で、家族を顧みない無責任者とするのは
失礼な話じゃないだろうか?
その作戦に躊躇する司令長官の東郷平八郎(渡哲也)を偽善とか
演出と感じた人もいたかもしれない。
そんなことないよ。当時はそういう作戦には指揮官として抵抗があった。

それでも生死を賭けてやらにゃあならんときがあるものです。
一番の問題は、現在の私達の生死観のズレにあると思う。

秋山好古は騎兵旅団を指揮しますが、
その部下たちに捕虜になった場合は自決せよと訓示していました。
騎兵の場合は下士官でも軍事的な情報を知り得ることから
それがロシア側に知れれば大事に至る場合が多かったのです。

それでも、非道い上級軍人だと思う人もいるかもしれない。
人間の命を軽んじているとして。やっぱり美化していると。

いえ、秋山好古は人間の命を粗末になど考えていない。
部下の永沼秀文が訓練中にミスしてその責任から自決しようとする場面で
それをとめる好古がいる。
「死ぬ覚悟は必要だが、そこをぐっと堪えることが大切」だと
やさしく諭す、好古なのです。

この人は、やさしい。

けれども、そういったことで矛盾し混乱する人も多い。
なぜだろう?
これが現在小中学校で問題とされている国語力の低下のせいなのか?
いやあ、子供の問題じゃないよ。大人達の問題。
ひとつには、私達の生死観、価値観に問題があると思います。



栄光のためではく生死を賭けた男達のドラマは
坂の上の雲まるわかり人物烈伝・工作員篇』
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/419893245X.html
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