あかんたれブルース

継続はチカラかな

盗まれた性格の本質



毒島ジギリのネーミングの「ジギリ」を
漢字に変換するとすれば、【自斬】とでもなるのかな。

これは極道が懲役逃れに刑務所で自傷行為を行って
病院から未決で保釈を狙う、戦後間もない頃に流行った手口で
仁義なき戦い』では悪魔のキューピー大西政寛の切腹
北九州やくざの「凶健」こと大長健一の
注射器で牛乳を血管に注入する凶行などを「ジギリ」と
稼業筋では申しておりました。

もともとハイジは躾の厳しい家庭に育った。
それがいろいろあって人間不信に陥ったことに
端を発しますが、それが速攻でどうのこうのってわけじゃない。
そういった芽生えが徐々に成長していくのには何年かかるものです。
なんたってまだ子供ですから。

疑う知性。

これは人間の成長に必要不可欠なものだ。
でもね、ハイジのそれはちょいと違う。
懐疑するその本質は、怖れや不安からなんだ。
他人が人間が恐いんだ。

いつ裏切るか。これがテーマだった。

人間は必ず、裏切る。
これはある意味で真理を言い当てているかもしれません。
人間っていう生き物は弱くて飽きっぽいものです。
その状況や環境や気持ちの変化で、
そういう行動に出る場合が多々あるものです。
すくなくとも相手はそれを裏切りと感ずるわけだ。

そういのがあって、なかなか人に心を許さない。
それは同時に人付き合いを遠ざけてしまう。
他人をあてになんかしない。
頼れるのは自分一人って考えてしまう。

そういうのがうまく転べば独立心とか自負心とかになって
実社会でプラスになる場合もあるのでようが、
どうもそういうものじゃあない。

緊張してるっていうか弛みがないんだな。
これじゃあ、つらいんだ。
どこかに無理があって不自然がある。
劇画じゃないんだからゴルゴ13みたいには生きられない。

所かわればJJ.とか馬太郎みたいな極楽トンボもおります。
こいつらは弛みっぱなし。抜け目がないんじゃなくて
抜け目だらけのバカチン野郎一番星です。
なんでやつらはこうなのかというと
小さい頃に親の愛情の栄養を十分に与えられて育った。
だからどこかで「なんとかなる」という楽天的な甘ちゃんなのだ。

甘ちゃんだろうが楽天家っていうのは幸せなものです。
よく、長生きするよといわれるのがその証。
根っからお人よしなのですね。
それでも社会は厳しいので、それなりに苦労はするんだが・・・

ハイジのそれはちょと違う。

予防線を張ったその線が織り重なってスダレノような
布になって衣を羽織る。
社会に適応するための環境やら学習効果で彩られます。

もともネンネですし、人間関係やら世界観も狭い。
ヤンキーの群れのなかに潜めばヤンキー仕立てにもなります。
そういったもので拵えた新しい人格だから
観る人接する人にとっては違和感もあるのでしょうが
なかなかそういう人がそばにいなかったのでしょうね。
正確にはそれを指摘してくれるお節介がいなかったわけだ。

やがて軒先程度の毒島ジギリが玄関から
応接間、居間、キッチンと
占領していきます。

ハイジはどんどん奥へ奥へと追い立てられて
子供部屋から布団部屋へと追い立てられて
乗っ取られていく。

ここまでくると本人も毒島ジギリを自分の人格なのだと
思ってしまうわけです。ま、それは間違いではない。
でも、ハイジは大丈夫なのか?