土寺ブリ子の濃厚なキス
土寺ブリ子というのがわたしの母親です。
暑苦しいほどの濃厚な愛情を注がれています。
脂がのりすぎて刺身にはむきません。
そういうわけで
わたしは淡白な女性を好んだのかもしれない。
が故に茨木サヨリとか腹黒いおんなに酷い目に遭う
因果があったのだと思います。
ブリ子は頭が悪いです。
センスがありません。
愚直というかノンストップママです。
思い込みが激しくて言っても聞きません。
厄介な女性です。
お彼岸の時期ですが
先日、ブリ子から「型菓子」を送ると電話がありました。
型菓子というのは落雁だと思ってください。
お盆とか、お彼岸にうちの地方では家紋の型の木枠に
米粉や麦粉に砂糖と水飴を混ぜてその型に
へっぺして、はい出来上がり。
米のほうを「白」、麦のほうを「黒」といいます。
黒といっても焦げたアイボリーのような色味ですけどね。
今頃の時期は各家庭でそれが出回って
子供らの私たちは毎日それだと飽きるので
仕舞いには口のなかに丸ごと押し込んで
その粉をぼわあーって吐き出して遊ぶものでした。
「ペギラー」ってね。
(ウルトラQの南極の怪獣で口から吹雪を吐く)
「お前が好きだから」という理由ですが
そんなわけで嫌いでもないけれど、
それほど好きってわけでもない。
懐かしくは思いますよ。
でも先月のお盆に五箱送ってきて
盆過ぎに上京してきたときに二箱おいていった。
一箱に十二個入っています。
それがようやくあと一箱で片付く、と思った矢先の追加の愛情。
以前だったら「いらない」と断るのですが
最近、わたしも鷹揚になって苦笑しながらも
ああ、有難うといった。
というか既に菓子屋に注文した後だったんですけどね。
えええっ、十箱お?
幸子に二箱、お前に八箱。
ちょっと待ってよ(汗)。そんな八箱なんて・・・
自分が二つでも取って、幸子に四つ、俺が四つでいいんじゃない。
どうも幸子は先手を打って拒否したらしく
それで被害を最小限の二箱にしたようです。結局、交渉の末
六箱送ってきました。六ダースですからね(汗)
我が家は私以外は甘いものを好まないので、これすべて
わたしの責任担当です。
ま、いいんですよ。型菓子ぐらいなら。
そうそう腐るものではないし。
問題は、一緒に送ってきたキクラゲの佃煮だ。
これが五袋入っている。
これもわたしの責任担当です。そんなに佃煮食えないよ。
賞味期限は27日まで。プレッシャーだなあ。
誰かにあげようと思ってもこんなもの誰ももらわない。
そのへんのスーパーで売ってるなんてことのない
徳用佃煮で、鹿児島の名産でもない。
原料は・・・中国産!
中国産のキクラゲの佃煮を他人にあげられるかあ?
なんていうか善意とか愛情はわかるけれど
もうちょっとみんなが喜ぶものを送ってくれないものかと
こういった記事を書くと
「いいじゃないですか」とほおぼのと微笑ましく
嗜めてくれるのですが、いやあなたは他人だから関係ないから
寅さん映画を観て笑っていられるようなもので
寅さんとかブリ子を家族に持つと大変なんだ。
捨ててしまえば、簡単なんだろうけれど
それがね、そうできないのだ。
ということで、今日もわたしはキクラゲ責めだ。
そうそう腹に入るものじゃあ、ないよ。