あかんたれブルース

継続はチカラかな

静香ちゃんのバイオリン

許さざる社会(4)


漫画でもアニメでも
コンセプトというものがあって
登場人物のキャラクター設定にも
それが顕著にあらわれているものです。

このシリーズで、ど根性ガエルの設定は
現代ではもう成立しないと記しましたが
それよりすこし後のドラえもんでも
ちょっと苦しいだろうなあ・・・と

のび太ジャイアンは排除される。
スネ夫が主人公
というわけにもいかないだろうし・・・
結局、出木杉英才だけを求めるのが
いまの時代だ。
しかしなあ、それじゃあつまらんよなあ。

不完全なものたちが集う
そこに時々登場する出木杉
単なる比較するだけの役割でしかなかった。
別に出木杉英才が悪いってわけじゃない。
それもまた個性であって資質なわけで
のび太からみれば鼻持ちならい奴にしか映らない
ようですが、まあそれはのび太の不徳。

女子代表では源静香ちゃんなんでしょうが
ここで作者はしずかちゃんにある傷をつける
配慮を忘れなかったわけです。
それはバイオリンだ。
キレイな薔薇のトゲ、タマにキズ
たかがバイオリンだけれどジャイアンの歌にも
匹敵するその設定で
しずかちゃんはアウトレットなヒロインになる。

しずかちゃんからバイオリンを取り上げると
風呂好き(潔癖症)の女子にしかならない。
藤子不二夫氏もよく考えておられる。

新渡戸稲造が著した『武士道』で
日本人というものは
欧米人が完全な完成された美(薔薇の花)
に対して、不完全で未熟なものに
魅せられると喝破されておりました。

つまり、しずかちゃんの未熟が
バイオリン(の腕とこだわり)であって
それが、しずかちゃんの魅力になる。
同時にしずかちゃんも出木杉ではなく
どうしようもない、ほおっておけない
のび太を選んでしまう。
その選択をご両親はどう考えたでしょうか。

人間が人間に対する惹かれる魅力って
優秀だけじゃない。
よく女性で「危険な匂いの男」に惹かれる
性癖をもつひとは多いものです。
この危険は危うさ、不安定さ、未熟さであり
そこに「母性」という存在がある。
男性の場合は・・・薄幸ですかね。
いずれにしても「不器用」さがそれであり
本来は器用なタイプにセクシーさは
あまり香らないわけだ。

この器用、不器用の査定は
生活力とか甲斐性とか能力云々ではなく
素直さ愚直さ一途さなんだと思います。
どうしようもないのび太ですが
それがあったんだな。

そんなのび太だからドラえもんが現われた。
のび太ドラえもんに甘えて秘密の道具で
下駄を履いてある時期をしのぎますが
それも永遠には続かない。
ドラえもんと別れてのび太はいろいろ考えた
と思います。しかしのび太がまったく
心を入れ替えて有能な人間になれたかとは
とても想像できない。

ただ、不器用であっても
素直さ愚直さ一途さはそのままあった。
あれたと思うのです。

そんなのび太にしずかちゃんは惹かれた。
しずかちゃんにとってのび太はバイオリン
みたいなものだったんでしょうねえ。

しずかちゃんは周囲がどういおうと
バイオリンが好きだったわけで
下手とか上手とか関係なかったわけだ。
それを理解していた親は偉いと思う。

どう考えても良妻賢母になるだろう
しずかちゃん。
そんな彼女の縁談があののび太だったと
世間は嘆いたことでしょう。
女子一生の不作だとか

でもさ、しずかちゃんはのび太をうまく
ハンドリングしていくと思います。
そのとき、しずかちゃんは
まだあのバイオリンを奏でているのでしょうか?
それは上達したのか
それとも下手の横好きのままなのか?


どっちにしてもしずかちゃんは
出木杉ではなくのび太を選ぶ。
選ぶんだよなあ