あかんたれブルース

継続はチカラかな

ロンリーウルフの懺悔録

前略おまけの馬太郎(2)


近頃わたしの相方の段平は始終ぶつぶつ文句いう。
こいつはフェアな男でどんな相手にも
平等に正面からぶつかる(確認する)質なので
憤懣する思いも多く強いのだ。
そういうことを理解できれば気持ちのいい男で
わたしもついつい本音も漏らせられる
貴重な癒しの段平ちゃんなのだ。

舌が長いのかね口の中でトグロを巻くような
巻き舌で田中邦衛みたいなしゃべりですが
顎は立つ。多少世間を斜に観てるところは
ありますが根は純情な奴だ。

北海道出身の段平は地方人にこだわり
東京人に対してもいっそうこだわる。
奴にいわせれば、いけすかない東京人でも
山の手の内側の東京人はまだ許せるが
中途半端な東京人、たとえば下町の連中は
逆に東京人自身を侮蔑するところがあって
イケ好かねえんだそうです(笑)
下町出身者は伝法を気取って
排他的で同じ東京人の山の手出身者をも蔑視する。
ましてや地方出身者には・・・
段平が毛嫌いするのはそういう理由でしょう。

で、東京人の
そういうなかでの50過ぎても結婚していない
男たちに奴の毒舌は容赦なくむけられる。
「おかしな連中だよ」と
オタクが入ったようなコジンマリした
小動物のような姑息な習性に鼻を鳴らすわけだ。
(それで地方出身者であれば論外)

強烈な個性があるじゃないし
かといって達観したあきらめのよさというほど
爽やかでもない。
ヘンに(どうでもいい)物知りで
若年寄の小市民で
あれはたぶん若い頃からそうだったはずだ。
根はみな善人で、ガリガリした地方人に
(特に関西人と九州人には要注意)
食い物にされないかと戦々恐々とする
草食動物のような

確かに独身の中高年男っていうのは
どこか壊れているような気がする。
部屋を訪ねたらとんもないものがあったりして(汗)
統計では67%が変態だそうです(嘘)
女性陣だったら「気持ち悪い」と平気で
言うんじゃない。言うよ絶対。(本当!)
それにカネに細かいしね(笑)

なんだろうねえ・・あれは
独身でもやってこれた、という
その環境に問題があるのか?

でもさ、そう考えると
ある共通点が浮き彫りになってくる。
その環境の多くの共通点とは親との同居だ。
ある意味で、生まれた場所が東京で
そこから離れることなく親と同居して生活する
とても自然なことだと思う。
それが故に結婚しなかったというを差し引いても
地方出身者の俺たちは羨望さえあるから
腹立たしくもあるんだろう。
自分たちのジレンマの八つ当たりなのかもね。

どこかの下町人情ドラマのような
標準語で会話するホームドラマのような
そういう家族の肖像
絵に描いたようなものなんてないのはわかってる。
でもさ、そういうのは別として
ああいった連中に共通する臭いっていうのは
なんだろうねえ。

不自由なかったんだろうなあ
そういった生活で十分満足、いや我慢できていた。
無理して逆立ちして女に入れあげる必要もなかった。
わたしも段平も結婚は早いほうで二十代の前半組です。
何から何までイチからカネのかかる環境ですから
そりゃあハングリーになりますよ。
それは下半身の衝動だけじゃなく
精神的に渇望する必須のライフライン
だったようにも思うわけだ。言い訳じゃなくて。

こんなわたしでも若い頃はひと財産稼いで
ヘーベルハウスの戸建てに別荘二三件
敷地に別棟を立てて母親を呼び寄せてなんて
漠然と考えていた。
その漠然さが不味かったんでしょうねえ。
イマイチ本気で金儲けに走れなかった感がある。
おかげで中途半端な宙ぶらりんの身の上だ。
東京の独身男たちを馬鹿にできない。
それは段平もわかっているんでしょう。
どっちが自然なんだっていわれたあら
俺たちはきっとベソをかくよ(涙)

しかしさ、東京人だろうが地方人だろうが
関係なく、共通して、親の介護の問題はある。
地方人はただ逃げ回っているだけで
それでも時間は刻々と経っている。
そこでも、まだ東京人は有利だと考えてしまう
そういうセコさが我々にはあるわけだ。

時間は後戻りしない。
若さを、時計の逆戻りを渇望するよし姉なんかを
普段はそういって嗜めている馬太郎ですが
実をいえば、事親のことに関する
こういったジレンマには、ついつい心が揺れるよ。

その意味でサブちゃんが羨ましい。
あの若さが羨ましい。
そしてタヌ子のような女性とめぐり合えた
ことが羨ましい。
それだったら・・・わたしだって、
真面目に、浮気なんかしないし
もっと真っ当な人間でいられたのかもしれない
とか、バカなことを考えますが
そういうことうっかり段平に漏らせば
ドヤサレかねないので黙ってここで懺悔するのだ。


前略おふくろ様・・・母ちゃんごめん