あかんたれブルース

継続はチカラかな

完璧の効果と効用

分福もののけ漫遊記(3)


中国は広大な大地のなかにある。
それは各邑々の点で構成されたものです。
日本のように面ではなく点で結ばれるだなのだ。
だから、洛陽であっても城外に一歩踏み出せば
そこは荒涼とした荒地がひろがっている。

杜子坊は足元の土くれを一握り拾いあげると
それを頭上に投げて土遁を使った。
と同時に杜子坊と分福は渇いた風にのって
瞬時にはるか彼方まで移動したのです。
やがて大きな河にさしかかると
今度は水遁を用いて
その流れにそって旅をしました。

「ねえねえ杜子坊。和氏の璧ってなんでざるか」

和氏の璧とは、はるか昔の春秋時代に楚の国で
和氏が発掘したという宝玉で、
最初は単なる雑石とその価値が認められなかった。
そのため和氏は両足を斬られる刑を受けたほど。
おおよそ三代の王が代わる時間を要して
それはようやく認められたのだ。
磨き上げられたその玉は和氏の璧と称されて
超国宝級の宝物となった。
やがてそれは楚から趙の恵文王へ、
秦の昭襄王へと持主をかえる。
なんせその玉ひとつで
15の城(都市)の価値があったという。

「そういうのがパチンコ玉ぐらいでも
 あったらなあ一生遊んで暮らせるやん。
 これで生活費の心配も借金も解決でっせ
 呪い退散の万々歳でござるなあ」

「そんなんじゃお前の呪いは解けないよ」

「なんででござるか。イケズいわんといて」

和氏の璧は別名「完璧」ともいわれる。
少しのキズもくもりもない
完全無欠のパーフェクトさん
だから完璧なのだ。

「いややん、アタシの美貌みたいやん」

「茶釜狸がなにを寝とぼけたことを」

「あんたアタシが月の光であらわにした
 赤裸々な姿を忘れんか」

「赤裸々って言葉はそういう風には
 つかわないの。
 ま、聞きなさい。この完璧は
 楚王から趙王、秦王へと渡った。
 しかしその持主になんら変化はなかったはずだ。
 むしろそれがゆえに
 禍を招いたといっても過言ではない」

「ふむふむ。じゃなんでそれが呪いを解く鍵なん」

完璧とは、自然のままということだ。
例の♪ありのままの~ だ。
つまり、恵文王も昭襄王もそのまんまの人
もっとつまりは、欲の皮の突っ張った俗物王
だったわけで和氏の璧を手にしても
なんら変化なんか起きない。これ当たり前で
それが彼らの本性本質なんだからしょうがない。
だろ。対して、分福お前はといえば
本来人間だったのが狸や茶釜に変えられてしまった。
これは不自然なことであって、正常じゃない。
性格の問題や大めしぐらいも多分にその呪いから
生じていると好意的に解釈すれば
この和氏の璧、完璧を手にすれば
きっと本来の姿に戻れるのではないか。
つまり、その呪縛が解けるのではないかと。

「いやあ流石やでえ講釈師見てきたような嘘をいう
 なんていうけれど、とても即興で思いついた
 与太とは思えまへんなあ。この詐欺師。
 でも、なんでその和氏の璧を探さないで
 わざわざその発祥現地までいって掘り出すんじゃ?」

そんな宝物になったものを探して手に入れようと
すれば色々面倒じゃないか。
現物は歴史上行方不明みたいだし。
まあ話しとしては色々展開して面白かろうけれど、
わたしゃ宮城谷でも浅田次郎でもない。
それに中国モノは漢字が難解でPCで出てこないし
作字するなんて面倒というか、できない。
それによく知らないんだよね。明代なんて(汗)。
国史専攻してたわけじゃないし雑学程度。
芥川龍之介風に始めてはみたけれど
もうすでに息切れしてきてるんだよね。

「だから土遁とか水遁を使ったんやな」

「そんなイチイチ描写できるか。
 ボロがでちゃうだろ」

「ふん、うすっぺらい奴じゃのう」

「こら下品な言葉遣いを改めろ。そんなんじゃ
 人間に戻っても単なる大阪のオバちゃんだぞ」

「ふん!」