あかんたれブルース

継続はチカラかな

エンゲル係数の呪い

分福もののけ漫遊記(5)


「パートの面接合格したで」

お金のない甲斐性なしの杜子坊にかわって
分福が働くことになりました。

「どこで働くの?」
「中国雑技団「南京大サーカス」」
見世物小屋じゃないか」
「歌って踊るんやでアーティストや」
「どうせ綱も渡るんだろ」
「よく知ってるな」
分福茶釜だもん」
「大スターやわ」
「で、ギャラは?」
「時給980円」
「なんか・・・ま、一時間であの和氏の璧
 手に入れられるじゃないか」
「そう思ってヒモのあんたのために
 尽くす健気なアタシって」
「誰がヒモなんだよ」
「ふん文無しの甲斐性なしのくせに」
「こらこら言葉が荒れてるぞ」
「ま、いけないアタシったら」

ところが何日経っても和氏の璧を手に入れる
ことはできません。稼いだ分がすべて
食費に消えていくからです。
「おい分福、いいかげんさ和氏の璧
 買いにいこうよ」
「そんな慌てることないがな
 腐るもんでも逃げるもんでもあるまいし」
「閉店セールってあったよ」
「中国人がいうこと関西人がいうこと
 商売人がいうことを真に受けてどうすんの
 閉店セールが終わったら開店セールや」
「でもさ、なんにせよ食べすぎなんじゃない。
 ま、これも呪いなのかなあ。
 どんなに稼いでもみんな食い物で消えてしまう。
 うん、呪いだわ」
「なにをごちゃぎちゃ言うてんねん。
 おっちゃん酢豚おかわり~」
「こら、とにかくその酢豚のお代わり
 取り消しなさい。そしたらその御代で
 和氏の璧買えるんだからね、ね」
「いやや」
「呪いを解きたくないのか」
「武士に二言はなし。一度口にしたものを
 吐き出せるかいな。もったいない」
「武士は食わねど高楊枝」
「マッサンかいなウチはエリーやない」
「とにかくさあ頼むよ」
「しょうがないなあ。特別やでえ」
とすったもんだでようやくあのお土産屋さんに
行くことになりました。
ところが、お土産屋さんはあったのですが
和氏の璧がない。
根こそぎみーんななくなってる。
「ご、ご主人、ここあった和氏の璧は?」
「へえさっき全部まとめて買っていただきました」
「な、なんてこったい」
「オーマイゴッドやな(笑)」
「お前がグズグズしてるから」
「オーマイゴッドやな(涙)」
「ご主人、で、どなたがお買いになったか」
鄭和様でございます」
鄭和・・・」
「知っとるんかい」
「いや・・・しかし鄭和って・・・」
「お腹すいた~」