あかんたれブルース

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都バスノンストップばぶる大戦

分福もののけ漫遊記(18)


前回(第8話から17話)までの話
鄭和に偽薬(プラセボ)の計を授けた杜子坊は
帰りがけに権耳という若者を託される。
この男、鄭和の西洋下りの航海に参加した豪の者。 
青龍刀厳児といえばちょっと名の通った
「あっ権耳だよ権耳だよ」と
子供たちにからかわれる大馬鹿者で
その背中には麒麟の刺青が、のはずが
鄭和が持ち帰った中東土産のキリンを
麒麟と勘違い。
彫たが最後、消しゴムがない時代。
青龍刀権耳は麒麟の権耳ならぬ
「あっキリンだよキリンさんの権耳だよ」と
ますます子供の人気者。
権耳はちょっと足りなくて言語障害があって
「パ行」でしか話せません。
「こんな厄介なの押し付けられてどないすんの」
「ひとにいえた義理かよ」
「それをいわれると面目ない」
変な居候を一匹抱えてしまった杜子坊と分福でした。

そんなある日、
分福あてに天津の女侠客眉大娘から宅配便が届いた。
眉大娘は分福の落書きファンでたまにこうやって
山海の珍味を送ってくるのだと。
これでひと月分の食事には事欠かないなと
みんなで話していた矢先のその晩に
なんと分福が一度に全部喰っちまたから
さあ大変。
小さな分福のお腹がはちきれんばかりに
膨らんだ、けれどもそれは茶釜のなか。
うんうんうなって38度9分の熱を出す。
意識もうろうするなかで
「蟹が食いたい」と寝言をほざき泡ふいて
失神してしまった。
そのとき、分福のふいた泡から
過剰将軍モットモットが現われ
杜子坊との死闘が三日三晩繰りひろげられる
が一進一退で勝負がつかない。
「蟹、蟹、蟹を喰わせろおおおお」
モットモットは呪文のように蟹を唱える。
そこで杜子坊は一計を捻り出し
権耳にザリガニを獲ってくるように命ずる。
はたして、権耳が大量のアメリカザリガニ
持ち帰れば、それを素揚げにして
上海蟹だとモットモットに捧げた。
この魔性は、喰うわ喰うわ止まらない。
と、そこで食中毒を起こして憤死しまいました。
中国のドブ川の蟹ですもん。しかもザリガニ。
妖怪だって魔物だって怨霊だってイチコロだ。
どろどろどろ
その亡骸からその正体を現す。
それは10メートルを超すサナダムシだったのです。
「これこそが分福に巣食う呪いだったのか」
ところが、呪いの回虫を退治しても
分福の意識がもどらない。
「パピプベポパヘ」
権耳のアドバイスで杜子坊は鄭和に頼み
第5回西洋下りの航海に同行すると
インドでカレーをゲットして速攻で戻った。
「分福、今夜はカレーだよ」
はたして、この一言とこの香りで分福の意識は戻り
これにて一件落着、なわけはない。

ここでおさらいすれば、
分福の異常行動には「過剰の呪い」がかかていた。
ただし、それは一匹ではない。
なぜならば、分福の大食いはそれからも続くし
またそれ以外にも挙動不審は多々あったからだ。
廃棄寸前のコタツのコードを2本買ってくるし
旅館の仲居に5000円のチップやるし
通販で米を100キロ落札するし
オモチャのお金をもって駄菓子屋に買い物いくし
歯医者フェチで口開けて昂揚してるし
怒るし泣くしくねっくねしてするし
少女のようで岸和田のタバコ屋の婆のようで
毒づくし、猿のように噛み付くし高いところに
のぼりたがる。そしてカバのように食う。
第一、まだ狸だし茶釜はそのまま。

進展してそうでまったく進展しない
また最初から振り出しに戻った
前回までのお話でした。