あかんたれブルース

継続はチカラかな

時をかける狸の家出

分福もののけ漫遊記(19)


「これからどうするでござるか・・・」
「どうしよう」
和氏の璧の効果もなかったしねえ」
「アタシがいけないのかしらん?」
「確かに、よくはない」
「お腹すいた~あ」
「またかよ」
「パピピププペピパパ」
「えっ!」
「なに?」
「いまさらそんなあ・・・」
「どうしたん? 権耳はなんて言ったでござる」
「いや、物語は唐の洛陽から始まったのに
 なぜか明の時代になってるって(汗)」
「あちゃああ、やってもうたんか」
「いや、ち違うよ」
「なに!」
「南京に着くまでのどこかできっと」
ピッポ?」
「タイムスリップしたんだ」
「パイププピップ?」
「タイムスリップ!」
「時をかける・・・狸」
「アタシのオナラはラベンダーの香りか?」
「普通に臭いよ」
「プッピープー」
「いい加減なやっちゃで」
「どうしても明の時代に来なければならなかった
 理由があったんだろう。
 たとえば鄭和さんと出合う必要があった」
「わからないでござる」
鄭和さんがいっていた。
 分福の呪いには意味があるんじゃないかと」
「ピピ?」
長安の壁に記された分福の落書きに
 僕は感銘を受けた。それは清らかなもので
 心を洗われるものだったわけだ」
「いやん恥し恥しい」
「分福は呪いをかけられたもののけ
 かもしれないが
 あんなメッセージを発信できる君は
 真実そのものではないかな。
 だから和氏の璧
 反応しなかったんじゃないか」
「パピ?」
「とは別に、
 あの過剰将軍モットモットみたいのが
 とり憑いているんだ。だけど
 全面的に支配されてるわけじゃない」
鄭和さんがいうには分福の呪いには意味があり
 それは天命ではないかと」
「天命ってなに?」
「天から与えられた仕事みたいなものさ」
「ペンペイ・・・」

三人は黙りこくって互いをみつめる・・・

「あっ、いけない。パートの時間やわ」
「ちょ、ちょっとお」
「ほんじゃ仕事行ってきます。
 その間考えてといてや。
 カレー作ったからチンしてな。
 ほんじゃ行ってきま~す」
「ピッペパッパ~イ」
「・・・行ってしまった」

分福は中国雑技団「南京大サーカス」で
あのままずっと働いていましたが
分福茶釜の歌って踊る綱渡り」興行が盛況で
パートから契約社員に昇格していました。
時給もアップして1150円。
それもあって本人はりきってるわけだ。
そんなある日、
団長から上海興行を持ちかけられた。
「えっ、承諾したの?」
「だってピンやでスターやで賄いもつくんやで」
「それより呪いを解くのが先決だろ」
「パピ」
「そんなんいうても解ける手立てがないやん」
「そりゃあそうだけどだからって」
「アタシはスポットライトを浴びるために
 生まれてきたんや」
「狸のままでいいのかよ」
「みんながアタシのことを愛してくれてんねん」
「ピポ」
「僕は反対だな」
「ポポピ」
「なんでアタシの幸せの邪魔するのん」
「邪魔なんかしてないよ。
 そういう目先の餌に食いつかないで
 もっと現実に向き合えよ」
「どうせ目先の餌に食いつく
 食いしん坊でござるよ!」
そうい言い捨てると分福は飛び出して行った。
「プンププー」
その夜分福は帰ってこなかった。
「杜子坊のバカ! 権耳の脳タリン!
 アタシは上海でスターになります。
 さようなら」

分福は帰って来なかった。