あかんたれブルース

継続はチカラかな

劇薬ドラマの見え透いた中和剤



ドラマ『Dr.倫太郎』を観てて
ついにこういう社会問題がドラマ化される
ようになったかと、感慨深く思うわけです。

ドラマの構成は『リーガル・ハイ』の堺雅人
弁護士から精神科医に設定をかえて
毎回精神疾患に関わるエピソードと
並行して蒼井優演ずる芸者の
解離性同一性障害(多重人格)
患者と精神科医の禁断の恋が展開されている。

彼女がこういった精神疾患を患った原因は
幼少期に母親の愛情を十分に得られなかった
という哀しい過去がある。
是枝裕和の『誰も知らない』とか
ドラマ『Mother』のように、切ない。
その酷い母親を高畑淳子が演じているわけです。
それは現在も続き
暴言と強迫恐喝として娘をさらに苦しめている。

どうするんだろう・・・

気にはなったのですが
第一回目の伏線から
この禁断の恋はタブーを犯すことなく
丸くおさめられる筋立てなんだなあ
とすこし興ざめしてしまった。
ミステリ小説の最後の頁を見てしまった
ようなものです。
それでとんと御無沙汰だったのですが
せがまれて一昨日2~5話までまとめて鑑賞。

次第に明らかになっていく
蒼井優夢乃と明良の解離性同一性障害
対して堺医師は決して踏み越えない。
夢乃=明良役が泉ピン子だったら
わたしも絶対に踏み越えないないけれど
そう好みでもなかった蒼井優でも
コロッといっちゃうもんね。
そんなわけでどうしても堺医師に不信と不実を
感じてしまうのです。
ま、わたしゃ精神科医じゃないしね。

これが連ドラにおけるテレビ倫理の境界線で
その枠内で展開させるしかない限界なんでしょう。
なんたって主人公は倫太郎という名ですから。
だったら、そんなに煽らなきゃいいのに
なんかヒロインが可哀想です。

だいたいがオープニングの
(迷える子羊の群れの)羊飼いの倫太郎からし
すべての種明かしをしてるようなものだけど。

『ずっとそばにいて』という彼女に
『ずっとそばにいるよ』と
倫太郎はそう言葉にして約束した。
「あれはないだろう」
「あの場ではああしか言えへんやろう」
とルイちゃんはいった。

酷なドラマだねえ・・・

そんな予想に反して
最後の最後に大どんでん返しがあったら
わたしゃ頭丸めよ(笑)

もうひとつ気になるのは
昨日も触れた高畑淳子演ずる
性悪女(母親)です。
あれって性格性質だけのものなのか?
きっと彼女も『冷たい熱帯魚』同様に
そういう生い立ちがあって
治療を受けなければいけない「被害者」
ということなんでしょうねえ。
負の連鎖が因果応報として末代まで続く。
なんともはややるせない。
と同時にあの手の類は少なくない。
ここが社会問題の核心なんじゃないのかな。

話を戻して、もしこの『Dr.倫太郎』が
劇場版として一本の作品として
脚本の水田伸生がオリジナルとして
自由に書けたとしたならば
『八日目の蝉』のように
良質なサスペンス、スリラー、ミステリ
の要素を盛り込んだ純愛作品になるのでしょうが
はてさて、それが許されるものかどうか。

それぐらい危険な代物で
恋愛自体が劇薬なんだと思い知らされる。