あかんたれブルース

継続はチカラかな

俺もきっと芙美子に惚れるな



古い奴だとお思いでしょうが
古い日本映画もなかなか良いものです。
『放浪記』を観た。
いわずと知れた林芙美子の原作。
自伝的小説というやつで
何度も映画化されたようですが
成瀬巳喜男監督の1962年版。
主演は高峰秀子
いやあ・・またまた感動しちゃった(涙)

高峰秀子は可愛いし美人だけど
演技も上手いなあ。
素材としての原作がよいので
台詞ひとつが心に沁みますた(涙)

作品の本筋とは別に
貧乏の哀しさ残酷さ、とは別にさ
清らかさのようなものにふれた。
みんなそれなりに貧しいのに
それなりに気前がよくてやさしい。

それは『ショーシャンクの空に』で感じた
友達とか友情についてのことと似てる。
環境によって人は変わる。
刑務所の囚人といえばみな犯罪者で
問題児厄ネタだらけなのはずなのに
そういったなかでも信頼をおけるものはいて
そこに友情が生まれる。
善良な一般市民の世界でもなかなか得られない
はずなのに。

作り物の幻影だって?
そうじゃないよ。ハーバード大学で発表された
ノアの方舟法則によると
無作為に集めた集団からある一定の比率で
良きもの悪しき者に振り分けられるとか。
二八の法則だね。

金持ちだからって気前がいいとは限らない。
むしろ逆の場合が多いそうです。
底辺の人間はどこかヤケッパチなのか
みょうに気前がいいんだ。

林芙美子の言葉として
「アカなんか大嫌い」というのがあった。
本当に貧乏だったらそんなこといってる
ヒマはなんだって。

そして、さびしいと。

ラストで成功して豪邸に母親を呼び寄せて
それがその母に豪華な羽織を着せてるんですが
訪ねてきた旧知の加東大介
「今日は法事かなんかですか?」には笑った。
芙美子がどっかでそういう金持ちの服装を
見たんだそうです。哀しい成金趣味で
まるで赤穂浪士瑤泉院みたいだと。
着てないと芙美子の機嫌がわるくなるって。
大笑いしながら泣けたよ。

貧しい放浪の父と母と娘
同じ放浪でも『砂の器』とはちょっと違う
滑稽でもありそれはそれで切ないのだけれど
なんか温かいのだ。

浮世の風に荒んだら
こういう良い作品が栄養剤になるよ。
見逃してる名作があったら
部屋を暖かくして観るのもいいもんだ。

俺もきっと芙美子に惚れるな
加東大介のように