あかんたれブルース

継続はチカラかな

ハッピーエンドじゃ許されない「名作の掟」

イメージ 1

 フィクションの世界をこき下ろしてしまいましたが、
 映画というものには、その時代時代の背景があり意図が含まれて面白いモノです。

 前回は『シェーン』で家族と夫婦関係の危機をテーマにしました。
 あの作品には他にもアメリカの御都合主義が挿入されております。

 今回は『黄色いリボン』です。
 主題歌がキヤノンのデジカメのCMに使われていますね。
 ジョン・フォードの騎兵隊三部作の一本です。
 アメリカ民謡のこの曲はそのすべての作品に使用されています。

 『黄色いリボン』をネタに語るのは「名作はハッピーエンドじゃダメなのか?」です。

 この作品は退役寸前のジョン・ウェイン演じる老大佐がインディアンを退治して日
 夕陽の中で「老将兵を語らず」と小さく消えていくラスト
 ワシントンから届いた「引き続き砦の司令官を任命す」という電報でハッピーエンド。
 
 このラストで、『黄色いリボン』は名作の権利を自ら放棄したといわれます。

 そうそう、『シェーン』は最後で主人公が死んでしまうってニュアンスでしたね。
 ジョーイ少年の視界から逃れた山陰でシェーンはガクッと肩を落とす。

 名作にハッピーエンドは禁物。

 たとえば、ポール・ニューマントレッドフォードの『明日に向かって撃て』は
 最後に二人はああなってしまうので「名作」ですが、
 『ステング』だと最後に二人はああなってしまうので「傑作」です。

 黒澤明の『七人の侍』は名作で『隠し砦の三悪人』は傑作。

 ヘップバンの『ローマの休日』は名作で『昼下がりの情事』は傑作。

 名作を得んがために『チャンプ』は息子を死なせる。
 「おい殺すことないだろう」と文句も出ました。
 『クリスマスツリー』も『火垂るの墓』も悲しいラストと引き替えに名作という称号を手にする。

 なかには唐突にお話を終えて置き去りにされてしまう作品も多いですよね。
 劇場の椅子でタイトルバックの後に「オチ」を期待しても
 余韻をお楽しみください。と館内は明るくなってしまうことが多いモノです。

 ハッピーエンドは娯楽なの?
 文芸はそんなに浅くない?
 名作はいつも悲しいパトラッシュ、ボクはもう疲れたよ。と