あかんたれブルース

継続はチカラかな

晶子の鉄幹への愛とそれ以外への鉄槌

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愛の十字路 第二章(番外-2)与謝野晶子の場合

   ああをとうとよ、君を泣く 君死にたまふことなかれ、

   末に生まれし君なれば 親のなさけはまさりしも、

   親は刃をにぎらせて 人を殺せとをしへしや、

   人を殺して死ねよとて 二十四までを育てしや


 日露戦争が佳境に入った頃、泥沼の旅順攻略で多数の兵士死傷していました。

 その厭戦を代弁してセンセーショナルを巻き起こしたのがこの詩です。

 詠んだ人、与謝野晶子歌人として、『新新訳源氏物語』などの作家として、
 女性自立論を唱えた思想家でもありました。

 情熱のひと晶子

 与謝野晶子をイメージすると「情熱」という言葉が自然に頭をかすめます。

 この大阪の羊羹屋の娘は文学少女でした。
 彼女は同人誌の仲間が上京していくなかで、
 女性である自分の束縛される定めに落胆していました。
 そこに、『明星』を創刊させた与謝野鉄幹に恋をしてしまいます。
 晶子だけではなく山川登美子も美男子鉄幹を愛し、熾烈な三角関係を生みました。
 そして、山川登美子は敗れ、鉄幹の妻が身を引き、晶子は鉄幹の略奪に成功します。

 処女詩集『みだれ髪』が発表されるのはこの頃。

 鉄幹との間に11人もの子供を産み、世間の名声とは別に極貧の生活を営む。
 夫の浮気が彼女を嫉妬で苛み続けますが、生涯彼を見捨てることはありませんでした。

 その内なるエネルギーは外へも向けられます。

 日露厭戦の詩を詠むかと思えば、幸徳秋水反戦論を拒絶しています。
 日露以降はむしろ好戦的な立場だったりする。
 この差はなに?

 私がもっと悩むのは。「君死にたもふなかれ」の君である「弟君」。
 彼は当時、実際に乃木第三軍にいた。輸送部隊だったと思います。
 いくら弟が心配だからって、こんな詩を発表したら
 懲罰人事で前戦肉弾命令とか思わなかったのか?
 いや、逆に安全だと考えたんだろうなあ(汗)。知能犯だ。

 この正義感の強い鉄の意志をもつ晶子は飽くなき挑戦を繰り返しました。

 晶子の「女性の自立・立脚」の思想は平塚らいてう山川菊栄との
 母性保護論争に発展します。これはいわば骨肉の争い。

 現代風に言えば、男女平等運動の盟友が育児支援法の是非で争うようなもの。

 晶子曰く「そんなもんを国家なんかぞに頼ってどうすんじゃい! あほんだら
      すべては己の努力不足じゃ。自業自得なんや。努力せんかい。」です(汗)。

 当時、晶子の家庭的な内情を知らない人達は引いたでしょうねえ。
 そりゃ与謝野はんやったらそれでええけど。って
 現代、その内情を知ったとしても
 そりゃ与謝野はんやったらそれでええけど。って

 まさに、鉄をも溶かす情熱の女・与謝野晶子です。
 姉にもったら大変ですが、恋人・妻にしても大変でしょう。
 君はボクがいなくても確実に生きていけるね、、、。となる確立は、、、?

 けれどもダメ夫の鉄幹にはそんなに大変じゃなかったようですね。
 これは相性の件のひとつのケースとして。
 そして、彼女が主張して実践した女の生き方をひとつの「愛」のかたちとして。

 与謝野晶子。面白い女だよね。
 愛には格差があり、格付けもある。というケースとして