あかんたれブルース

継続はチカラかな

情けなくて可愛い吉良常くん

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織江の後ろ姿(3)



青春の門』に尾崎士郎『人生劇場』を感じたところ、
やっぱり五木寛之はお手本にしたそうです。

こちらは場所を愛知県吉良町。あの忠臣蔵の敵役、吉良上野介の所領。

「青春篇」、「愛慾篇」、「残侠篇」、「風雲篇」、「離愁篇」、「夢幻篇」、「望郷篇」、「蕩子篇」からなる。そうな。
青春の門』は「筑豊篇」「自立篇」「放浪篇」「堕落篇」「望郷篇」「再起篇」「挑戦篇」「風雲篇」でしたね。

『人生劇場』は何度も映画化されています。その数14回。
私も何度となく観ている気がします、いまひとつストーリーは漠然。
というか、青春大河ロマンというよりも「仁侠映画」ですよね(汗)。

吉良常と飛車角という侠客が登場します。

飛車角については、以前記事にしましが石黒彦市という実在のモデルがいます。
飯干晃一の最高傑作『狼どもの仁義』は映画化もされて、こちらもなかなかの秀作。

『人生劇場』は「残侠篇」以外は自伝的ノンフィクションだといわれます。

とすると、もう一人の吉良常は、、、。

苦労人の残侠で物事の筋目をよく分かっている。飛車角に説教しますからね(笑)。
主人公の青成瓢吉を「坊ちゃん」と慕ってなにかと世話を焼く。

私がリアルタイムで最後に観た83年の東映版では
若山富三郎勝新太郎の実兄)が演じていた。これが印象的。
過去を調べると月形龍之介が演じているようです。これもいいなあ(涙)

で、本棚を探したらありました。『人生劇場』の第一部「青春篇」新潮文庫上下巻。
なんでもあるなあ(汗)。魔法の本棚です。しかも未読(汗)
以前「愛慾篇」を読んでイマイチだったのですが、

この「青春篇」、面白い!

まず、吉良常ってやくざがなんとも貧乏臭いというか情けないのです。

唯一の子分というのが元旅役者といっても馬の足役。その劇団名が市川章魚(たこ)之助一座(笑)。
その子分「呑み込み半助」の早合点で人を指して逃亡する吉良常。

情けない。

吉良の仁吉の血筋を引くのだそうです。
舞台は明治ですからね、日露戦争前後。
幕末の吉良の仁吉の伝説がまだまだ生々しい。それなのに吉良常、、、。

子供達から冬でも足袋をはかない吉良常は「ぽんちたびなし」と囃し立てる。
もしかして、織江のモデルは吉良常?

それはそれとして、非常に愛嬌のある愛すべき侠客として描かれています。

また、主人公の父は胃弱から胃ガンになって、
痛み止めに打ったモルヒネの中毒者。
戦前戦後ならヒロポン中毒者。
でもね、これが良い味を出している(涙)。
宮本輝の『流転の海』のような感じです。

織江を探す旅は、吉良常の足袋が気になって、
旅は道連れで、二人まとめて探していくことになりました。