あかんたれブルース

継続はチカラかな

仁侠映画の草分けに一本筋の感謝の念



ちょっと前にBSで見逃した
『日本侠客伝』 遂に観ました!
前々から気になって観たかった作品だった
のですが、コレが実に良い!
思わぬ拾い物だった。

任侠映画といえば、その最高傑作は
『博奕打ち 総長賭博』が世間の相場でやんす。
ところが曲がり屋のわたしとしてはそうでもない。
わたし的には『博奕打ち外伝』だったのですが
ここにきて、急遽この『日本侠客伝』か?

その前に
なぜ『日本侠客伝』が気になっていたか?
それは、この作品が東映任侠映画第一作
というエポック的作品であったこと。
(実際には1963年の『人生劇場 飛車角』ですが
 本格的任侠路線シリーズの草分け的作品)
いまでこそ健さん映画として
様式美として日本映画史上に任侠映画
過去の栄光として刻まれ認知されている
けれども、この第一作公開時は
いわゆるキワモノゲテモノとして
評論家や関係者筋から白い目でみられていた。
長く時代劇に慣れ親しんでいた俳優人にしてもだ。
そんななかで企画され製作され公開されたのだ。
主演は東映の若きエース
御存知高倉健です。
企画したのは鬼才というか恐怖の俊藤浩滋
娘の藤純子が初々しく出演してもいる。

この作品に友情出演として
萬屋(中村)錦之助が出てるのですが
友情出演としながらかなり重要な役柄で
共演しています。
錦之助は長く東映時代劇の看板スターとして
その黄金期から頑張ってきたわけだ。
それが不振となって見限られるカタチとなって
この作品に出演するというのは断腸の思いだった。
そこをマキノ監督との義理から
あえて東映の次世代を背負う高倉健の露払いを
かってでたのだそうです。
(こういうことは鶴田浩二には絶対にできない)

脚本を担当した笠原和夫の『昭和の劇』から
そういった裏話を読んだりして
この地味な作品を観てみたいと思ったのですが
新宿昭和館も今はなし
たまに地元のレンタル屋で探しても
仁侠映画自体が品薄ですからねえ

ま、そんなこんなでようやく念願の鑑賞だった
わけですがこれが実に良い。
任侠映画独特のマンネリがないんだな。
そりゃそうだ草分けの本格作品第一作だもんね(笑)

脇役では長門裕之が良かった。
その相手役に毎度の南田洋子もこれまた良い。
田村高廣も良かった。
内田朝雄が最後まで悪人でなくて
ハラハラしてホント良かったです(汗)。

当然、錦之助も良かったですよ。
笠原曰く、錦之助が自前で上総訛りの
千葉のやくざを好演していたと。
そこを注意深く観察していたのですが
わたしにはそれがよく聞き取れなかった。
それは『仁義なき戦い』で三上慎一郎が
新開という在日やくざの朝鮮訛りがよく
聞き分けられなかったのと同じで
ちょっと悔しかった。日本語って難しい。

とにかく良かったのです。
オチがなくて申し訳ないのですが
落す必要がないのだ。
この作品のヒットからシリーズ化され
合計11本が制作されます。
当初うるさかった評論家のバッシングはなに?

その任侠路線も飽きられ
東映は実録路線に活路を見出し
高倉健東映を去ることになる。
それもまた時代
チャンバラ時代劇から任侠、実録路線へ
ああ昭和の劇にいつも心を躍らされた。
血湧き肉踊るブルブルブル
劇中長門裕之が放った名台詞
「男に一本筋を通せて有難う」

これだね。